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境界性パーソナリティ障害とは?② ~境界性パーソナリティ障害発症の原因と治療法~

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境界性パーソナリティ障害とは?① ~感情が不安定で対人関係にも問題が…。境界性パーソナリティ障害の8つの症状~

境界性パーソナリティ障害は、何が原因で発症するのでしょうか?

さまざまな説があり、まだ定まっていません。

しかし、原因は複合的なものだと考えられています。

境界性パーソナリティ障害の原因

生物学的要因としては、

  • 感情や衝動性と関係している脳の働きの変化
  • ストレスに対応する機能の弱まり

などが考えられています。

また、家庭の養育環境との相互作用が発症に影響を与えているという説もあります。

境界性パーソナリティ障害は、感情や衝動のコントロールがうまくできないことが特徴ですが、それらは脳の働きと深く関係していることから、脳の特定の部位や神経の働きと、発症の関係が研究されています。

前頭前皮質の不活性化

前頭前皮質は、行動をコントロールし、合理的判断に関係する部位です。

なんらかのストレスによりこの部分の活動が低下すると、偏桃体の活動を抑えることができず、感情や行動をコントロールできなくなると考えられています。

不安、うつ、衝動性とセロトニン

脳内の神経伝達物質のひとつがセロトニンです。

セロトニンがうまく働かないと、不安やうつの気分が強くなったり、衝動が抑えられなくなることが分かっています。

偏桃体

脳の中でも怒りや不安などの感情と深く関わっているのが、大脳辺縁系の偏桃体という部分です。

境界性パーソナリティ障害に人の偏桃体は、平均より小さいという研究があります。

また、偏桃体の特定の部位が、感情的な刺激に対して過剰に反応するという研究もあります。

遺伝する性質かどうかは不明

脳の働きの違いには、生まれつきの要素も、生育期に形作られる要素もあります。

それは、本人が悪いせいでも、周りの人が悪いせいでもありません。

脳の特徴が遺伝するのかどうかは、まだ研究段階ですが、境界性パーソナリティ障害の人の血縁者は、境界性パーソナリティ障害の発症率が高いという研究もあります。

また、うつ病や双極性障害、反社会性パーソナリティ障害、薬物依存の人が多いという報告もあります。

境界性パーソナリティ障害と合併しやすい病気

うつ病

境界性パーソナリティ障害の人が、生涯にうつ病を経験する割合は90%に近いという報告があり、もっとも合併が多い病気です。

元々、生きていることに空虚感を持つことが多い境界性パーソナリティ障害の人は、うつ病の症状と多くの共通点を持っています。

特に、自傷行為や自殺企図を行った人は、ほとんどが抑うつ状態にあったことが調査により分かっています。

摂食障害

摂食障害も境界性パーソナリティ障害との合併が多い病気です。

特に女性に多く、その背景には境界性パーソナリティ障害の特徴である、自己破壊的な衝動があります。

摂食障害には、食べることを拒否する神経性無食欲症(拒食)と、神経性大食症(過食)の2タイプがありますが、境界性パーソナリティ障害の場合、衝動的にむちゃ食いをして、あとで排出するタイプです。

境界性パーソナリティ障害と摂食障害が合併している人には、高い割合でうつ病が合併していることが知られています。

また、自傷行為や自殺企図、アルコール・薬物乱用の割合も高いようです。

これらの衝動的な行動の根本には「生きていても仕方がない」という虚無感、自分に対する否定的な感情があり、そこに対人関係などのストレスがプラスされると、衝動的に自己破壊的な行動をしてしまいます。

境界性パーソナリティ障害の治療法

境界性パーソナリティ障害の治療は、生物学的な面や、心理・社会的な面といった、さまざまな方法が用いられます。

生物学的な側面から…薬物療法

心の病気を治療する薬は多くありますが、境界性パーソナリティ障害に効く特定の薬はありません。

そこで、境界性パーソナリティ障害の症状である、衝動性や感情の不安定性に対して効果がある薬を服用する方法がとられます。

また、うつ病や不安障害など、他の心の病気を合併している場合は、その病気に対する薬物療法が行われます。

心理的側面から…精神療法

精神療法は、心理・社会的側面に働きかける治療法で、空虚感や見捨てられる不安など多くの心理的な問題を抱える境界性パーソナリティ障害の人にとって、大きな力になる可能性があります。

薬物や物理的な手段ではなく、言葉などを用いて認知・行動に心理的に働きかける治療法で、いろいろな方法や種類があります。

認知行動療法

認知とは、人が物事をとらえて受け止める、またはその捉え方や受け止め方のことで、誰にでもその人なりのクセや偏りがあります。

認知行動療法は、その人特有の認知のクセにより問題が生じていることに本人が気づき、感情や行動を変えることで問題の改善を目指します。

境界性パーソナリティ障害の人が起こす問題行動の背景には、ある決まった認知のパターンがあり、それによって現実との間にズレが生じいています。

認知療法では、その認知のパターンの特徴を明らかにし、本人が自覚して、問題行動を未然に防ぐことを目指します。

対人関係療法

患者本人にとって重要な他者との関係に焦点を当て、対人関係の改善を図る精神療法です。

境界性パーソナリティ障害の人は、見捨てられることへの不安が根本にあるため、対人関係で特有のパターンの問題を起こします。

対人関係療法では、そうしたパターンがなぜ起こるのかを明らかにし、それを変えていこうとする意志を強めるような援助をします。

そして、いつも陥りがちな対人関係のパターンにならないためにはどうすればいいか、工夫しながら学習体験を積み重ねます。

対人関係療法では、患者本人だけなく、必要に応じて家族などの重要な他者が同席する合同面接も行われます。

精神分析的精神療法

患者さんが心の奥に抑えこんできた感情や欲求に気づき、自分を見直すことを援助します。

感情や行動、対人関係、自己同一性に問題を抱える境界性パーソナリティ障害の人にとって、自分の内面について深く知ることは、回復への手がかりになります。

本当はどうしたかったのか、どんなことに怒りや絶望を感じたのか。

それらに気づき、自分自身を客観的に見る視点を持つことは、これからの自分の生き方を考えていく上で役に立ちます。

弁証法的行動療法(DBT)

弁証法的行動療法(DBT)は、境界性パーソナリティ障害の患者に向けて、個人精神療法と集団技能訓練などを組み合わせた統合的なプログラムです。

欧米では、従来の治療と比べ、特に自傷行為や自殺企図などの自己破壊的な衝動的行動に改善効果が高いことが認められています。

日本では、DBTの導入はまだ始まったばかりで、かつ治療スタッフが少ないのが現状です。

メンタライゼーション療法(MBT)

DBTと同じく、境界性パーソナリティ障害のためにイギリスで開発された治療法です。

精神分析的精神療法を基本に、集団精神療法や個人精神療法を組み合わせた統合的プログラムで、治療が終わったあとも、治療で身につけた能力は持続し、自己破壊的な行動をする割合も少ないと報告されています。

日本での導入は、これからになりそうですが、境界性パーソナリティ障害への有力な治療法として注目されています。

周囲の人の対応

周囲の人はどのように対応すればいいのでしょうか。

まず、押さえておきたい点は、境界性パーソナリティ障害の人の暴力や自傷行為、感情の不安定さは、病気のせいで起こっている、ということです。

周囲の人は、この病気の特性を理解し、粘り強く本人と付き合っていく覚悟が必要です。

支える人のあり方

拒絶することは問題の解決を遅らせますが、過剰に親身になりすぎても、よい結果にはつながりません。

また、お互いに自分の行動に責任を持つ関係になりましょう。

「お前のせいでこうなった」「こうしてくれなければこうしてやる」は、自分の行動の責任を誤解しています。

まず、間違った発想から抜け、自分の立場でどのような援助や関わりができるのかを考えることから始めましょう。

  1. 過剰に反応して振り回されない
  2. 過度に自分の責任を感じすぎない
  3. できないことはできないと言う
  4. 改善には時間がかかると考えて焦らない
  5. 本人の行動は本人に責任があるという姿勢を貫く
  6. 患者本人だけでなく、自分も変わる
  7. 相談する相手を持つ

境界性パーソナリティ障害まとめ

境界性パーソナリティ障害は、感情や気分が不安定で変わりやすいのが特徴です。

そのため、周りの人もついていけず、対人関係でトラブルになることも多くなります。

境界性パーソナリティ障害の治療には認知行動療法などの精神療法が効果的ですが、すぐに治るわけではありません。

忍耐強く治療を続けていくことが大切です。


参考:
新版 よくわかる境界性パーソナリティ障害 こころのくすりBOOKS Kindle版, 林 直樹,株式会社主婦の友社,2017/03/01

 

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