「現代ストレス社会」と言われる今。
ストレスフルな環境で働き続けるためには、自分で自分を守る工夫が必要です。
その工夫のキーワードが「感情」!
「感情とうまく付き合うための処方箋」では、仕事で感じる「怒り」「悲しみ」「落ち込み」「不安」の4つの「感情」を味方につけて、ストレスから自分を守る方法をご紹介します。
第15回は、「【落ち込み】~「考えない」「忘れよう」とするほど、かえって思い浮かべてしまう~」の続き、「【落ち込み】~「反すう思考」から現実思考へ戻る5つのワーク~」を解説していきます。
目次
【落ち込み】~「反すう思考」から「現実思考」へ戻る5つのワーク~
前回は、「反すう思考」と距離をとる4つの方法をご紹介しました。
距離がとれたら、現実に沿った考え方をする練習をしましょう。
距離をとるだけでは、「反すう思考」に再び引っ張られてしまう可能性もありますが、現実思考に戻っておけば、それを防ぐこともできますし、つい「反すう思考」が始まってしまっていた場面でも、現実に沿った考え方をすることができて、落ち込みを予防することができます。
再発防止と未然防止に役立つのです。
極端にネガディブになった「反すう思考」からバランスを取り戻すために、次の「5つのワーク」を試してみてください。
【1】根拠を検証する
「反すう思考」からバランスをとるために、根拠を検証することが役に立ちます。
「反すう思考」が“正しい”と言える根拠と、“正しくない”と言える根拠を挙げるために、「根拠シート」を使います。
根拠シート
思考が正しい根拠…3つ質問されたうち、1つの質問にしか答えられなかった
思考が正しくない根拠…取引先で説明したのは初めてだった。1つの質問には答えられた
根拠をふまえて考えると…取引先で説明したのは初めてだし、3つの質問のうち2つには回答できなかったが、それで仕事の適正がないと決めつけるには根拠が足りない。今回の経験をふまえて、今度はあらかじめ質問を予想して対策すればいい。
まず「反すう思考が正しい」と言える根拠を書きます。
大切なのは、誰が見ても聞いても「そうだ」と言える客観的な事実しか書かないこと。
「気がした」「みたいだった」「自分にはこう見えた」というのは根拠になりません。
客観的事実のみしか書けないとなると、意外と書き出せることが少ないと思います。
客観的な根拠なしに、頭の中で勝手に思考をふくらませて落ち込みを長引かせていることも多い、ということです。
このことに気づくだけでも、大きな前進です!
次は「反すう思考が正しくない」という根拠を挙げてみます。
ここが浮かばない時は、ワーク【2】【3】も使ってみてください。
2種類の根拠を書き出したら、それをふまえて「今回の出来事をどんなふうに捉え直せそうか?」を、まとめてみましょう。
【2】「友人が同じ状況にいたら?」と考える ~友人アドバイス法~
「反すう思考」とは別の捉え方のアイデアを出すために、友人にアドバイスするイメージを活用します。
例えば、取引先で説明して質問にうまく答えられなかったのが、仲のいい同期のBさんだったとしたら、あなたはBさんになんと声をかけるでしょうか?
「あの課長はそんなことで評価しないよ」
「いい経験になったんじゃないか?次はもっとうまくやれるよ」
こんな言葉が浮かぶのではないでしょうか。
客観的な視線から自分に言葉をかけるのは難しいですが、仲のいい同僚や友人が同じ状況にいたら…とイメージすると、視野が広がり、やさしい言葉をかけられます。
自分にも同じように声かけしてもいいはずですよね。
【3】見えなくなっているポジティブ探しをする
「反すう思考」をしている時は、ポジティブな面が見落とされがちです。
ポジティブな面にあえて注目することで、ネガディブに偏った思考からバランスがとれて、現実思考をしやすくなります。
- 自分の強み
- 持っているスキルや能力
- 過去に成功した時のこと
- これまでにあげてきた成果
- 現在の仕事でうまくいっている部分
などなど…。では、今回の例ではどうでしょうか?
「課長からも『分かりやすい説明だった』と言われた」
「これまでの成績は順調だった」
これらはポジティブな面だと言えます。
思い浮かばない時は、パソコンに入っている自分が手がけてきた仕事のファイルや報告書、過去にもらったお礼のメールや手紙を読み返す、などを見返すのも一つの方法です。
自然とポジティブな面を思い出させてくれるので、おススメです。
【4】人と話して現実思考を取り戻す
これまでの3つのワークを試しても、自分だけで「反すう思考」から抜け出すのが難しいと感じたら、誰かに話を聞いてもらいましょう。
「反すう思考」をしている時は、大抵視野が狭くなっています。
その状態で、一人で考え続けるのは、自分を責める声と自分の二人だけで対話を続けて、「反すう思考」の底なし沼にはまってしまうようなものです。
こんな時は、誰かに「反すう思考」のループから引っ張り出してもらいましょう。
その相手は、自分が安心して話ができる相手、自分と環境が近すぎない人がいいでしょう。
仕事の内容や立場や環境が違う人の方が、「こういう見方もできるんじゃないか?」と、視野が広がる一言をくれる可能性が高いです。
【5】「それを考え続けて、いいことがある?」と考える
「反すう思考」は、大抵の場合、極端に自責的だったり、ポジティブな面をなかったことにして、現実から離れているものですが、中には事実としか言いようがないこともあります。
実際にミスをしてしまった時、「ミスをしてしまった…どうしよう」と考え続けてしまうとしたら、根拠シートを使っても「だって実際にミスしたし…」と抜け出しにくいものです。
そんな時は、自分にこう問いかけてみましょう。
そうすれば、グルグルと考え続けても、自分の気持ちが落ち込んでいくだけで、いいことがなさそうだ、と気づくことができます。
次回、【落ち込み】~「こんなのありえない!」という行動で落ち込みをストップ!~、へ続く