会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第12回は、「職場でみられる発達障害…『空気が読めない。思い立つとすぐ行動せずにいられない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『人が傷つくことを平然と悪気なく口にする』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例5】…「人が傷つくことを平然と悪気なく口にする」(Oさん・20代男性)
Oさんは、神奈川県出身の20代の男性で、地元の進学校を経て、国立大学の工学部を卒業後、大手衣料品メーカーに就職しました。
普段は寡黙で仕事熱心なOさんは、成績も優秀ですが、時折強い口調で突拍子もないことを言って周囲を驚かせることがありました。
上司の奥様が不慮の事故により、40代という若さで亡くなった時、鎮痛な面持ちで出社した上司に向かって、「奥さん、なんで死んだんですか?ガンですか?事故ですか?自殺ですか?」と言い放って、部内を凍りつかせました。
また、会社の創立記念日のパーティーでは、着飾った女性上司に「キャバクラ嬢みたいな衣装ですね。似合っていませんよ」と、笑顔もなくばっさり。
さらに、ある会議の席では、Aさんの発言が終わった途端、「みんなあなたを嫌っている。あなたは能力も人格も低いのでここにいるべきではない」と、唐突に発言。
「みんなって誰ですか?」と聞くAさんに、「〇〇さんも、△さんも、□さんも、あなたを嫌いだと言っていました」と、陰でAさんの悪口を言っていた人たちの名前をあげてしまったのです。
上司や同僚が「言わなくてもいいことをいちいち言うな」「無礼にもほどがある」「場をわきまえなさい」と、Oさんに意見すると、彼は仏頂面で、「分かりました。僕がしゃべるとなぜか怒られるので、以後は社内メールでご連絡いたします。用のある方はメールでお願いします」と言ったのです。
その日以降、業務連絡はもちろんのこと、ちょっとした会話も全て社内メールですませるようになりました。
Oさんは、なぜ自分が怒られるのか分からないのです。
コミュニケーションを自ら閉ざしてしまったOさんは、ますます孤立を深めています…。
考えられる症状
ASDの場合、共感能力が低いため、他人の状況や気持ちを察することができず、思ったことをそのまま一方的に話す傾向があります。
本人には自覚がないため、いつの間にか周囲から浮いて距離を置かれたり、嫌われたりしまうことが理解できません。
また、相手の表情や身振りから心情を慮ることができないため、怒っていたり、不快に思っていることが伝わりません。
周囲の対応策
このタイプの人には、上司が根気強く丁寧にものの言い方を伝えていく必要があります。
その際、強く叱責したり、あいまいな表現「きちんと~」「ちゃんと~」などと言うのではなく、具体的な指示を出しましょう。
例えば、「さっきのあの場合は、~という言い方にした方が相手に伝わりやすい」などです。
しかし、アスペルガー症候群の人は、教えてもらったことを応用することが難しく、失言を繰り返してしまいがちです。
「沈黙は金」を意識に留めさせて、意見を求められた時以外は話さないように指示するのも、トラブルを回避するコツと言えます。
次回、「職場でみられる発達障害…『騒々しい場所が苦手。気が散りやすく飽きっぽい』」、へ続く