会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第14回は、「職場でみられる発達障害…『騒々しい場所が苦手。気が散りやすく飽きっぽい』」の続き、「職場でみられる発達障害…『社会的マナー、礼儀作法、躾が身についていない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例7】…「社会的マナー、礼儀作法、躾が身についていない」(Wさん・30代女性)
人材派遣会社勤務のWさんは、30代後半のベテランマネージャーです。
有名女子大学を卒業後、得意の英語を活かすため、外資系企業に就職し、順調にキャリアを重ねてきました。
しかし、Wさんは「常識がない」「自分勝手すぎる」「人を見下している」と、職場でも人望はあまりありません。
同僚の結婚式の二次会では、お祝いのスピーチの最中に一人で席を立ち、バイキング形式の料理の前をウロウロしたり、寿司の好きなネタだけをはがして食べるなど、その振る舞いに周囲を唖然とさせました。
また、同僚と出張でホテルの同室に泊まった時は、用意されていたバスタオルはアメニティを全て一人で使いきったり、仕切りのカーテンをひかないで入浴して浴室のトイレットペーパーまでびしょ濡れに。
さすがに呆れた同僚が「これはマナー違反でしょ!」と怒ると「なんでそんなことくらいで怒るの?」と、全く意に介しません。
職場では、スタッフが苦労して収集分析した大切なデータをWさんのミスで消去してしまったこともありましたが、「うっかりポイしちゃった」と、あっさり事実を認めただけで、スタッフに謝罪の言葉はなく、ひんしゅくを買いました。
「せめて一言謝るべきでは」と忠告した同僚に、「ミスは誰にでもあること。私は人がミスしても責めない」とバッサリ。
そんな態度に「不遜」「マナー違反」と周囲は呆れ、軋轢は深まっています。
Wさんは、「なぜ私には仲間ができないのか。誰もついてきてくれないから企画はたくさんあるのに、なかなか実現できない」と悩んでいます…。
考えられる症状
社会常識や暗黙のルールを守らず、人の気持ちを察することができないことから、ASDと思われます。
本人は悪気がないため反省もなく、周囲には自分勝手、非常識、デリカシーがないと思われ浮いてしまうため、友人関係も構築しにくいのですが、本人にはその理由がわかりません。
周囲の対応策
プライベートな場面では、家族が一つひとつ教えていくしかありません。
ASDの人は、目に見えないものを想像することが苦手なため、職場では、本人が比較的信頼している上司や同僚が、本人を傷つけないように配慮しつつ、話して聞かせる聴覚的な伝達ではなく、なぜいけないのかを図式化するなど、目に見える形で説明する必要があります。
次回、「職場でみられる発達障害…『本音と建前が理解できない。冗談が通じない』」、へ続く