会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第19回は、「職場でみられる発達障害…『文章を書くのが苦手。興味の偏りが激しい。スケジュール管理ができない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『仕事が遅く納期に間に合わない。忘れっぽい』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例12】…「仕事が遅く納期に間に合わない。忘れっぽい」(Kさん・40代男性)
Kさんは、地元の大学を卒業後、公共施設の事務職になった40代の男性で、業務内容は経理関係です。
Kさんは幼少の頃から、約束を守るのが苦手で、日常の何でもないことが守れません。
例えば、毎日のルーティンであるはずのタイムカードを押し忘れたり、会議の遅刻は常習犯。
初めての場所へ行くときは必ずと言っていいほど遅れてしまいます。
昔から時間の逆算が苦手で、合理的な移動ができなかったそうです。
現在、Kさんの一番の問題は、納期が迫っているに先延ばしにしたり、締め切りを守れないことです。
「失敗が怖くて決断ができなくなり、自分のところで作業がストップしてしまう」そうです。
そのため、納期が近づいていても遅々として作業が進まず、残業後も自宅へ持ち帰って差帳することになり、22時を過ぎる残業も増えてきています。
この頃から、上司の言うことや、今聞いた頼まれごとなどが、頭からすっぽりと抜けてしまうことが起きるようになりました。
財布や携帯をどこに置いたのか分からなくなって、一日で何度も捜すことになったり、一度目を通した書類なのに「まだ見てない」「領収書に見覚えがない」「時計を読み違える」など、「もしかしたら認知症なのかも…と思い、病院で検査をしましたが特に問題はななった」とのこと。
職場では、部下から「仕事ができない無能な上司」という烙印を押されて、あからさまに無視されはじめたり、上司からは「だらしがない。信用できない」と厳しく評価されて、粗末な仕事しか回してもらえなくなりました。
Kさんは、「もうこれ以上、職場に迷惑をかけられない」と、転職を考えています…。
考えられる症状
ADHDの人は、複数の業務を並行して行ったり、優先順位がつけられず、計画を見直すことが苦手なため、段取りがうまくできない場合があります。
興味のあることをやりたがり、必要だけれど自分にとってつまらない作業は後回しにしてしまうこともあります。
また、忘れっぽく、失くし物が多い、というのも、不注意型のADHDの特徴のひとつです。
周囲の対応策
やるべき仕事(その日、その週、その月など)の予定を一覧にしたスケジュール表を作成し、自己管理できるようにさせた上で、確認を繰り返すように指導しましょう。
スケジュール表は、その日の作業を振り返り、できたこと、できなかったこと、今後の課題を記録する「業務日誌」と連動させると、自己管理の意識づけが期待できます。
次回、「職場でみられる発達障害…『細かいことにこだわる。全体が見えない』」、へ続く