会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第38回は「発達障害に似た症状と発達障害の治療法④ 発達障害の主な治療法」の続き、「【まとめ】発達障害の人の多様性を活かす」を解説していきます。
【まとめ】発達障害の人の多様性を活かす
発達障害を抱える人は、子どもの頃から「普通にしなさい」「ちゃんとしなさい」と言われ続けてきた経験が多いものです。
周囲から注意ばかり受けていたため、「自分はダメな人間なんだ」と思ってしまうこともあるでしょう。
世の中では「多様性が大切」と言いつつ、「普通」からはみ出した人に対しては寛容でないことがしばしばあります。
そんな中で、発達障害の人たちが日々苦労を重ねていることを、少しでも理解していただけたらと思います。
「多様性」という言葉を考えるにあたり、「ジャガイモ」を例に挙げます。
ジャガイモは、数十種類が個々に適した気候、抵抗力、生産性が多様なため、ある種の条件のみで、全体が絶滅することはないと言われています。
アメリカ大陸発見のあと、痩せた土地でも栽培可能なジャガイモはヨーロッパに輸入されましたが、多数種のうち、生産性の高いわずかな種類だけを持ち込んだため、19世紀に発生したジャガイモの疫病の流行により、疫病に弱い種を栽培していたアイルランドは飢饉に陥りました。
これは、動物でも植物でも、生産性や収益性のみを優先すると、危機的状態において種の絶滅に繋がることを示唆していると言えます。
「全ての生物にひとつとして無意味なものはない」
人口の10%にのぼると言われている発達障害の人の存在にも、十分意味があるのではないでしょうか。
なお、発達障害が疑われる偉人は数多く存在します。
「ひとつのことにこだわり集中する力」、「過去にとらわれず新しいことに積極的に立ち向かう姿勢」、「『普通』の人には思いつかない発想」…。
周囲と一時的に軋轢を起こすことがあっても、彼らの存在は長い歴史から見ると不可欠だったのです。
一定のルールが優先される職場において、発達障害の周囲の人たちは、彼らに振り回されて迷惑をこうむることも度々あるかもしれませんし、できれば距離を置きたいという気持ちが勝こともあるでしょう。
しかし、彼らが本質的に抱えた個性を忖度して排除するのではなく、何とか活かせる方向を見つけられる、そんな「多様性を大切」にする社会に少しずつ近づいてくれればと思います。
了