会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第28回は、「職場でみられる発達障害…『協調運動が苦手で事故に遭いやすい。TPOに合わせた声出しができない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『整理整頓、片付けができない。デスクや部屋が乱雑』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例21】…「整理整頓、片付けができない。デスクや部屋が乱雑」(Yさん・30代女性)
Yさんは、私立大学の理工学部出身で、現在、工学機器メーカーの販売部で勤務している30代半ばの女性です。
趣味はゲームで、「何も考えずに没頭できるので頭が休まる」とのこと。
そんなYさんは、片づけが苦手で、デスクの散らかりようはすさまじく、「魔窟」と呼ばれるほどです。
資料や本の山がいくつもあり、サプリメントや趣味のフィギュア、食べかけおお菓子や文房具類が隙間を埋めるように置かれ、昼食に買ってきた惣菜のパックや飲みかけのペットボトルなどが、何本もそのまま放置されています。
以前、引き出しの奥にしまわれていたキムチが腐敗醗酵して、異臭騒ぎを起こしたこともありました。
上司から何度も注意を受けていますが、Yさんは片づけられません。
いざ、片づけを始めても、「ゴミは捨てられるけど、何が不要で何が必要なのか優先順位がつけられない。どこにしまったらいいのかわからない」と、選別せずなんでも闇雲に捨ててしまうので、必要な書類や持ち出し禁止のサンプル品を破棄してしまい、問題になったこともあります。
その他に、歯ブラシをパソコンの上に置く、飲み終わったマグカップにペンをさす、脱いだ靴下をデスクの上に置くなど、「ふさわしい場所」へ戻すことができません。
髪の毛もとかさず、バッグも学生時代から使っているものなので、ボロボロ。
靴下も左右揃っていないことも多く、取引先への打ち合わせにもそんな恰好で来るため、上司は「冷や汗ものだ」と苦笑しています。
当のYさんは、「おしゃれに興味がなく、朝は身だしなみに気をつかう時間があるなら寝ていたい」と、まったく気にする様子はありません…。
考えられる症状
パソコンやゲームなどに対する過剰な集中は、ADHDが疑われます。
また、ADHDの人は管理が苦手なので、整理整頓、掃除なども不得意なことが多くみられます。
優先順位をつけられず、何から手をつければいいのかわからなくなり、放置することが重なって、異様なほどのちらかりに繋がる場合もあります。
管理や身だしなみにも無頓着なため、「だらしがない」という印象を与えてしまいます。
周囲の対応策
仕事の大切な資料を失くすことは、信用を失うことにも繋がります。
整理が苦手な人タイプの人は、パソコン内も未整理なままで、「間違って削除した」「あったはずのデータが探せない」ということもあるかもしれません。
デスクやパソコン環境は、定期的に上司が介入して整理されることを促す必要があるでしょう。
また、身だしなみも、仕事相手へのマナーのひとつです。
男女問わず、常識の範囲内で整えるよう注意していきましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『会話のキャッチボールができない。仕事のストレスから買い物に依存』」、へ続く