会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第30回は、「職場でみられる発達障害…『聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例23】…「聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏」(Tさん・20代女性)
Tさんは公立中学校の英語教師を勤めて4年目になる女性です。
幼少の頃から神経質なところがあり、特に音と匂いに敏感で、電話や時計のアラーム音が爆音に聞こえ、悲鳴をあげたくなるほどビックリすることがあるそうです。
ホームルーム中の教室など、複数の声が飛び交う騒がしい場所にいると落ち着かなくなり、突然、耳をふさいで「うるさいうるさいうるさい…」と不機嫌になったり、生徒に肩や腕を軽くつかまれただけでも、強い痛みを感じて、オーバーアクションで反応するため、生徒たちはTさんの様子を奇異に感じているようです。
Tさんは匂いにも敏感で、いつも口にハンカチを当てているためか、隣席の同僚は「自分の体が臭っているのか…?」と、いたたまれず、物理的にも精神的にも距離をおくようになってしまいました。
こうなると、声をかけられることも少なくなり、親しい関係性がなかなか築けません。
人の視線にも敏感で、「特に背後に人がいると気になってしかたがない」と、視線を感じると硬直したり、体をそむけたり、思わずにらみつけたりしてしまいます。
Tさんは次第に「エキセントリック(風変り)な人」と言われ、孤立してしまい、学校へ行くことに不安と緊張を感じるようになりました。
そして現在、不安神経症と診断され、医師からは休職をすすめられています…。
考えられる症状
音、匂い、痛みに敏感で、びっくりしやすい、などは、ASD特有の感覚過敏です。
その反応で、周囲からは違和感を覚えられて距離を置か孤立したり、二次障害として不安神経症を併発してしまったと考えられます。
周囲の対応策
職場では、耳栓やヘッドホンの使用を認めたり、パーティションで区切るなど、外部からの刺激をさえぎるような空間を作るとよいでしょう。
本人が孤立しないよう、本人の話をよく聞きながら対応したいところです。
次回、「職場でみられる発達障害…『人の名前が覚えられない。失礼な発言を繰り返す』」、へ続く