「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第3回は、「統合失調症の発症要因とは」の続き、「統合失調症の発症から予後」についてみていきます。
統合失調症の発症から予後
前駆期か(前兆期)~急性期
統合失調症を正しく理解するためには、どのような経過をたどるのかを知っておくことも重要です。
統合失調症の経過は、
- 前駆期(前兆期)
- 急性期
- 休息気(消耗期)
- 回復期(安定期)
の4つの病期に分けられ、病期とともに症状も変化していきます。
それぞれの特徴をみていきましょう。
統合失調症には、「前駆期(前兆期)」といって、発症の前触れのような症状がみられる時期があり、前駆期は病気を発症する数年前から始まっていると考えられています。
前駆期によくみられる症状としては、
- 不眠
- 食欲不振
- 不安・焦り
- 抑うつ気分
- 意欲や集中力の低下
などがあります。
また、昼夜逆転や引きこもりなど、生活パターンにあきらかな変化がみられることもあります。
ただ、これらの症状は疲れやストレスが溜まった時など、病気でなくても起こりうる症状のため、見過ごされがちです。
また、うつ病や不安障害など、他の精神疾患の症状とも重なるため、前駆期の症状だけで統合失調症かを見極めるのは難しいところがあります。
しかし、この段階で精神科を受診し、継続して経過を診ていけば、発症を防いだり、早期発見、治療に繋げることができます。
前駆期を経て「急性期」へ移行すると、幻覚、妄想、興奮といった「陽性症状」が強くあらわれるようになります。
幻覚や被害妄想があらわれると、不安や恐怖、切迫感、疑い深さなどが強くなり、周囲との良好な関係を保つのが難しくなり、家庭生活や社会生活に支障をきたすことがあります。
急性期の強い陽性症状は、1~2カ月ほど続き、その後、「休息期(消耗期)」と移行します。
休息期(消耗期)~回復期(安定期)、予後
急性期の激しい症状が落ち着いてくると、ガクンと元気がなくなり、
- 無気力
- 抑うつ
- 倦怠感
などといった「陰性症状」が出てきます。
これが「休息期」のはじまりです。
急性期は、幻覚や妄想による現実離れした言動が特徴としてありますが、休息期に入ると少しずつ現実感を取り戻してきます。
ただ、急性期の興奮状態とは逆に、感情がとぼしくなり、思考力、判断力、集中力、意欲も低下します。
また、周囲に無関心になり、人付き合いを断って引きこもりがちになることもあります。
激しい症状が続く急性期は、多くのエネルギーを消費する一方、休息期は気力も体力も消耗した状態になり、脳の活動性も低くなります。
休息期の患者さんは、薬物療法の影響もあり、1日中ボーッとしたり、寝てばかりいることがありますが、この時期は消耗したエネルギーをじっくり蓄える充電期間で、十分な休息が必要なのです。
休息期は多くの場合、数か月続きますが、その間は十分な休息をとり、適切な治療を続けることで、「回復期(安定期)」へと向かいます。
回復期は、少しずつ安定感を取り戻していく時期で、周囲への関心や意欲も出てきたり、活動の範囲や内容も広がっていきます。
リハビリや社会技能訓練(SST)、デイケアなどに参加しながら、社会復帰を目指します。
ただし、陰性症状が続いていたり、認知機能障害(※1)が現れやすい時期でもあるので、治療の継続は重要です。
安定期は通常、数か月~数年単位で経過し、適切な治療を続けることにより、およそ半数が発症前の状態まで回復するとされています。
一方、回復期または回復後に再発を繰り返すケースや、陰性症状や認知機能障害が慢性化してしまうケースもみられます。
※1)認知機能障害…記憶力、思考力、判断力、注意力、計画機能、実行機能、統合機能など、日常生活や社会生活を営む上で欠かせない機能が低下すること。これにより「生きづらさ」を感じるようになり、社会的機能に障害をもらたします。
次回、「再発防止と誤解・偏見」へ続く