うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第12回は、「なぜ非定型うつ病になってしまうのか?」の続き、「自己愛の強さと非定型うつ病」をみていきます。
目次
自己愛の強さと非定型うつ病
強すぎる自己愛が対人関係に影響する
他者よりも自分を大切に思う気持ちは誰にでもあり、自己愛そのものは悪いものではありません。
ある程度の自己愛は必要なものですが、自己愛が強すぎることで人間関係が築けずにストレスを感じ、うつの原因になっている場合は問題です。
幼少期は誰もが自身が世界の中心で、何でもできるという感覚を持っています。
大人になるにつれて、様々な困難な状況に出会い、努力してできるようになったり、できないことを諦めるようになる…などの「術」を身につけて、強すぎる自己愛が健全なものへと落ち着きます。
自分への評価が等身大になり、社会に適応する力が身についてくるのです。
しかし、大人になっても自己愛が強いままだと、ありのままの自分が受け入れられず、「他人から指摘や批判に対して過剰に反応する」、「他人からの評価を求めすぎる」、といった弊害があらわれて、人間関係にも支障をきたすようになります。
うつ病を引き起こす気質のひとつに、この「自己愛の強さ」があります。
自分の行動を顧みず、周囲の人を責めることで強いストレスを受け、その結果、抑うつ状態になりうつ病を発症してしまいます。
また、自己愛が強すぎると、自分が傷つくのを恐れるあまり、パニック症を併発する場合もあります。
非定型うつ病の症状にある「拒絶過敏症」の根底にも、この自己愛が強い気質が存在すると考えられていて、自分は自分、他人は他人と割り切ることができず、いつも周囲の人の目を気にして、相手の顔色をうかがってしまいます。
その結果、相手の言動を「侮辱された」「軽んじられた」と感じて、過敏に反応します。
自己愛が強すぎると自己中心的になるか臆病になるか。両極端な人格に…
強すぎる自己愛は、人によって両極端なあらわれ方をします。
一つは「自己中心的」なタイプです。
常に自分が注目されていなければ気が済まず、批判されるとひどく怒ったり、他者の気持ちを思いやるどころか、他者にも自分と同じような感情があることすら考えようとしません。
そのため、周囲との摩擦も生じやすく、周りの人にも大きなストレスを与える存在になります。
もう一つは「周囲をきにしすぎる臆病」なタイプ。
他者から自分がどう見えているかが絶えず気になり、
「バカにされているのではないか」
と、他者の言動に敏感で、非常に傷つきやすくなります。
これらは両極端な二つのタイプですが、その根底にあるのは、現実の自分を受け入れられない、強い自己愛です。
非定期うつ病は、この後者の「自己愛性格障害」の人に見られることがあります。
自分の自己愛はどの程度強い?
自分自身の自己愛について知るため、次に10の項目をあげました。
自分が強く当てはまると思う項目はいくつあるか、調べてみましょう。
□ | 他人からの評価が常に気になる。 |
□ | 相手からバカにされているのではないかと感じることが多い。 |
□ | 自分は世の中の役に立っていないと感じることがある。 |
□ | 自分の考え方に強い自信を持っている。 |
□ | 自分も間違いを指摘されると、たとえそれが小さな間違いでもひどく落ち込む。 |
□ | 度落ち込むとなかなか立ち直れない。 |
□ | 他の人に注目されていないと、自分がつまらない人間だと思えてくる。 |
□ | 自分は他人よりも、何事もずっと多く頑張っている。 |
□ | 自分よりも相手が優れていると感じる機会が多い。 |
□ | 対人関係でトラブルが多い。 |
当てはまる項目が5つ以上あり、対人関係に問題を抱え続けている場合は、ひとりで悩まずに家族や医師に相談してみましょう。
当てはまる項目が4つ以下だったとしても、現在対人関係で悩んでいる人は、すべてを相手のせいにするのでなく、自分の言動を振り返ってみてください、
他人の批判や指摘などは一旦受け取り、その指摘が不当なものか?ある程度は自分に非がないか?を冷静に検証しましょう。
そうすることで、次回からどのように対応すればトラブルが避けられるか?を考えられるようになります。
次回、「脳内の変化とうつ病 ① 神経伝達物質の働き」へ続く