うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第25回は、「病気で傷ついた心から生まれる思考・行動」の続き、「パニック症はなぜ起こるのか」をみていきます。
目次
パニック症はなぜ起こるのか
脳にある危険を察知する装置が敏感になりすぎて、誤作動を起こし、警鐘を鳴らず…。
パニック症は、脳の機能障害による病気、という学説が有力です。
脳が機能障害を起こし過敏に察知する
パニック症の発症のメカニズムは、全てが解明されているわけではないのですが、このところの研究で、いくつかの原因説があります。
●脳が「誤作動」を起こす
脳内の「警報システム」が誤って作動するというのが、現在、有力な説になっています。
これは脳の誤作動によって、神経伝達物質が異常に分泌され、あちこちを刺激するため、危険なものはないのに恐怖におびえて、パニック発作が起こる、という説です。
私たちの脳には、危険が迫ってきたときなどにそれを察知して、警告を発するしくみがあります。
その中枢は、脳の大脳皮質で、そこから指令が出されると、脳の各領域では、危険なものから逃げたり、敵と戦ったりするための準備をします。
中でも偏桃体(大脳辺縁系の一部)は情動の中枢で、ここが危険を察知して恐怖感が呼び起こされると、その恐怖感は青斑核をはじめとする脳幹部の自律神経中枢核へと伝播していきます。
青斑核では、ノルアドレナリン(興奮性の物質)を放出し、筋肉に血液を送り込んで心拍を速くしたり、血圧を高めたりします。
ノルアドレナリンは、心身に危険を知らせるための警報のような役割があります。
しかし、この警報装置は敏感で不安定なため、誤って動作することがあります。
まわりに危険がないのに、扁桃体が過敏に働いてしまうのです。
それが自律神経を刺激して、眩暈や動悸などのパニック発作を引き起こします。
その影響は、大脳辺縁系(生きるための本能や感情を司る部分)や、前頭葉(人としての精神活動の中枢)にまで及び、予期不安や広場恐怖症が起こってくると考えられています。
●神経伝達物質の影響
神経伝達物質には、脳の神経細胞の間を行き来して情報を伝達する働きがあります。
パニック症に影響を与えるのは、次のような物質です。
興奮の物質で、不安や恐怖とも深く関係します。
パニック症は、このノルアドレナリンが過剰になったために起こると考えられています。
定型うつ病では、このノルアドレナリンの働きが極度に低下するとされています。
不安を抑え、平常心を保つように働きます。
パニック症では、脳内のセロトニンが不足していたり、セロトニンに感応する神経の働きが弱くなっているため、病気が起こると考えられています。
定型うつ病でも、セロトニンの働きが極点に低下することがわかっています。
ギャバは、不安を抑える働きがある神経伝達物質で、ギャバ・レセプターとベンゾジアゼピン・レセプターは繋がっているため、ベンゾジアゼピン・レセプターが刺激されると、ギャバ・レセプターの作用が高まり、負担がおさまります。
そのため、パニック症は脳内のギャバ―ベンゾジアゼピン・レセプターの感受性に問題があって起こると「考えられています。
●受容体が過敏になる
脳内にある炭酸ガスを感知する受容体(レセプター)が過敏になって起こるという説。
レセプターが過敏になっていると、脳内に炭酸ガスが増した程度でも、過剰になっている、酸素が不足していると脳が誤解して、窒息感が上昇し、呼吸困難などの発作が起こるというものです。
次回、「パニック症とうつ病はきってもきれない関係」へ続く