うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第31回は、「PTSDと、うつ病・パニック症との類似症状状」の続き、「限局性恐怖症、強迫症、全般不安症」をみていきます。
目次
限局性恐怖症、強迫症、全般不安症
不安や恐怖はさまざまな病気を引き起こします。
こちらでは、「限局性恐怖症」「恐怖症」「全般不安不安症」の、3つについて詳しくみていきます。
非定型うつ病に併発しやすい「限局性恐怖症」
「限局性恐怖症」は、ある特定の物や状況に対して、過剰な恐怖を抱く症状です。
恐怖の対象になるのは、人によってさまざまですが、
- 嵐や風
- 動物(くも、蛇、ネズミなど)
- 血液
- 注射
- エレベーター
- 飛行機
- 高い場所(高所恐怖)
- 閉鎖された空間(閉所恐怖)
- 刃物、針など先のとがったもの(先端恐怖)
などがあります。
非定型うつ病には不安症が併発しやすいのですが、その中で最も多いのがこの限局性恐怖症です。
さらに、限局性恐怖症はパニック症とも併発しやすく、アメリカの調査によると、75%と非常に高いです。
精神科クリニックを受診した患者さんの既往歴を調べた調査でも、パニック症を発症する前、既に限局性恐怖症があった人は約4割で、圧倒的に女性に多くみられました。
この調査では、限局性恐怖症の既往歴がある人がパニック症になると、広場恐怖症の症状が強く出ることも分かりました。
子どもの頃、怖がり気質で恐怖症が芽生えた人は、年齢を重ねるにつれ、パニック症などの他の不安症も発症しやすいようです。
ただ、この恐怖症は、恐怖の対象になるものに直面しなければ苦痛は少なく、他の不安症ほど日常生活に支障が出ないため、これだけで受診する人はそれほど多くありません。
過剰なこだわりが生む「強迫症」
例えば、
- 手が痛くなるくらい何度も手を洗う
- 鍵をかけたか、ガス栓を閉めたか、など何度も同じことを確認する
- ある考えが頭の中に繰り返し起こり、振り払うことができない
- 順序や左右対称などにとらわれすぎてしまう
このようなことは、誰でもたまには経験しますが、それが習慣化し、エスカレートして病的になり、生活に支障が出てしまうのが「強迫症」です。
強迫症のベースにあるものは強迫観念です。
これにとらわれると、自分の意思に反して、無意味で非現実的な考えが繰り返し頭の中に浮かび、その考えを払いのけようとしてもできなくなってしまいます。
何度も手を洗ったり、確認行動がやめられなくなったりと、強迫行動があらわれると日常生活は著しく困難になります。
本人も、自分の「こだわりすぎ」に気づいていても、自分から人に相談することは少なく、医師を受診することもないまま、長い間一人で苦しんでしまうこともあります。
慢性的な不安の病気「全般不安症」
「全般不安症」は、慢性的な不安と、それに伴う身体症状が長く続くのが特徴です。
神経質で、不安を持ちやすい人がなりやすいとされ、女性の患者は男性の倍ともいわれています。
強いショックや不安、悩みごと、ストレスといった精神的な原因や、過労、睡眠不足、風邪などの身体的な原因をきっかけに、いつの間にか発症します。
症状は、
- 不安
- 過敏
- 緊張
- 落ち着きのなさ
- イライラ
- 集団困難
などの、精神症状と、
- 筋肉の緊張
- クビや肩のコリ
- 頭痛、頭重
- 動悸
- 息苦しさ
- めまい
- 頻尿
- 下痢
- 疲れやすい
- 不眠(寝つきが悪い、中途覚醒、眠りが浅い)
など、多様な身体症状があらわれます。
日常生活のストレスの影響を受けて、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続きます。
また、途中から気分が落ち込んでうつ状態をともなったり、実際にうつ病に移行することもあります。
次回、「パニック症とパーソナリティ障害の関係」へ続く