うつ病 お役立ち記事 非定型うつ病

非定型うつ病ってどんな病気?【35】~パニック症の診断~

投稿日:


うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。

うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。

「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。

第35回は、「非定型うつ病の診断」の続き、「パニック症の診断」をみていきます。

目次

パニック症の診断

パニック発作が起こっても、パニック症とは限りません。

身体症状はないか? 他の精神疾患はないか?などの見極めが必要です。

診断には、DSM-5の診断基準が使われます。

症状が似ている別の病気との見極めが重要

パニック発作が起こると、不安や恐怖といった精神症状と同時に、動悸、めまい、呼吸困難などの多彩な身体症状があらわれます。

診断では、これらの症状がパニック症によって起こっているのかどうかを見極めることが重要になります。

パニック発作=パニック症

とは限らないためです。

パニック症の診断も、DSM-5が世界基準になっています。

【診断の手順】

●まず、様々な身体症状が体の病気によるものではないかどうかを内科的に調べます。

●次に、問診で、パニック発作の内容、起こった時の状況、発作前後の状況、などを患者さんから詳しく聞き、「パニック発作の診断基準」(※1)と照らし合わせて、パニック発作であることを確定します。

●パニック発作が、パニック症によるものかどうかを診断します。
発作が予期せず繰り返し起こる、再び起こるのではないかという不安(予期不安)がある、などが条件になります。(※2「パニック症の症の診断基準」参照)

●場合によっては、パニック発作が他の不安症(恐怖症など)や、薬物(麻薬、覚せい剤など)によるものではないかどうかを調べる必要があります。

●広場恐怖症を伴っているかどうかも、「広場恐怖症の診断基準」(※3)に照らして調べます。
広場恐怖症があるかどうかで治療法が変わってくるためです。

●患者さんの心の状況を知るために、不安の度合い、日常生活、仕事、学生の場合は学校関係、家族関係、友人関係、生育歴(どのように育ってきたか)、本人や家族の病歴などについても質問します。医師には守秘義務があるので他の人に漏れることはありません。

●必要がある場合は、脳波や、脳の画像検査、心理テストなどが加わることもあります。

(※1)パニック発作の診断基準(DSM-5による)

強い不安や不快を感じる時間帯は、はっきりと他と区別できる時間帯で、そのあいだ、以下の症状のうち4つ以上が突然出現し、数分以内にそのピークに達する。
(注:この症状は落ち着いた状態からも不安な状態からも起こりえる)
1.動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
2.発汗
3.身ぶるい、または震え
4.息切れ感、または息苦しさ
5.窒息間
6.胸痛、または胸部の不快感
7.吐き気、または腹部の不快感
8.めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
9.冷感、または熱感
10.異常感覚(感覚麻痺、またはうずき感)
11.現実感の消失(現実ではない感じ)、または離人感(自分ではない感じ)
12.とんでもないことをしたり、気が狂うのではないかという恐怖
13.死ぬのではないかという恐怖

(※2)パニック症の診断基準(DSM-5による)

A.予期しないパニック発作が繰り返し起こる
B.少なくとも1回の発作のあと1カ月間(またはそれ以上)、以下のうち1つ(またはそれ以上)が続くこと
①もっと発作が起こるのではないか、発作の結果についての心配(例:コントロールを失う、心臓発作を起こす、気が狂う)
②発作に関連した行動の大きく不適切な変化(例:パニック発作を回避しようとする行動、例えば、運動や慣れてない状況を避ける)
C.この障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般的な身体疾患(例:甲状腺機能亢進症、心配疾患)の直接的な生理学的作用に寄与するものではない
D.この障害は、以下のような精神疾患ではうまく説明されない
(例えば、パニック発作は、社会恐怖のように特定の恐怖の対象もしくは状況に制限されるわけではない。また、強迫症の強迫観念や心的外傷後ストレス障害でトラウマティックな出来事の想起、あるいは分離不安における身近な家族から離れることへの反応のみで起きるのではない)

(※3)広場恐怖症の診断基準(DSM-5による)

A.少なくとも以下の5つの状況のうち、2つ以上の広場恐怖症の対象となる状況についての顕著な恐怖もしくは不安
①公共の交通機関(例:自動車、バス、電車、船、飛行機での移動)
②開けた空間(例:駐車場、スーパーマーケット、橋)
③店、劇場、もしくは映画館にいる
④列に並ぶ、もしくは人ごみにいる
⑤その他の状況で家の外に一人でいる
B.自分を制御できなくなる症状や、パニック様症状が起きた時に、逃げることが困難、、もしくは助けが得られないないかもしれないために、これらの状況に恐怖を感じる
C.広場恐怖症の対象となる状況において、一貫して恐怖または不安が誘発される
D.広場恐怖症の対象となる状況に積極的に回避するか、同伴者を求めるか、あるいは激しい恐怖もしくは不安を感じながら耐え忍んでいる
E.恐怖もしくは不安は、広場恐怖症の対象となる状況において、実際に引き起こされた危険性に対して釣り合わない
F.恐怖、不安、もしくは回避は、少なくとも6か月持続する
G.恐怖、不安、もしくは回避は、臨床上著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
H.この障害は、物質(乱用薬物、投薬)または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)の直接的な生理学的作用に寄与するものではない
I.この障害は、以下のような精神疾患ではうまく説明されない
(例えば、限局性恐怖症-状況型の限定された対象あるいは状況に対する不安、社交不安症や醜形恐怖症の社会的状況に対する不安、心的外傷後ストレス障害のトラウマティックな出来事の想起に関する不安、分離不安における身近な家族から離れることへの不安)


 
次回、「非定型うつ病の治療 ① 薬物療法」へ続く


 

restart_banner



-うつ病, お役立ち記事, 非定型うつ病
-, , ,

Copyright© 障害者就職ナビ , 2024 All Rights Reserved.