いきなりですが、「アルコール中毒」と「アルコール依存症」の違いってなんだか分かりますか?
実は、「中毒」と「依存症」は、似たように見えてもまるで別の概念なんです。
両者の違いをまとめてみました。
目次
アルコール中毒とは
アルコール中毒とは、アルコールを飲んだらろれつが回らなくなったり、記憶力が低下したり、思うように行動ができなくなったりなど、心身に悪影響を及ぼしている状態のことを言います。
お酒を飲みすぎる人のことを、俗に「アル中」などと呼んだりしますが、実際にはアルコール中毒というのはそのような場合には当てはまりません。
アルコール依存症とは
アルコール依存症がアルコール中毒と大きく異なっているのは、アルコールを飲用していない、しらふの状態でも定義されるところです。
症状が顕著にあらわれないしらふの状態での明確な定義はがあるわけではありませんが、臨床現場では、アルコールの摂取により、精神的、身体的依存が成立してしまっている人を依存症としています。
アルコール依存症の定義の目安
- 飲酒するとどんな場面でも酔っぱらってしまい、その場にあった飲み方ができない
- アルコールを求めた行動が周りからよくわかり、アルコールの確保に神経を使う。
一気に2~3杯飲まないと落ち着かない - アルコールに強くなり、飲酒量が増加する
- アルコールが切れると、イライラしたり、手が震えたり、吐き気、発汗などの症状がでる。
音などに敏感に反応する - 離脱症状の繰り返しにいらだちや不安を感じ、お酒を飲むことで症状を回避しようとする
アルコール依存者は平成13年の時点で、約250万人いるといわれています。
飲みすぎは身体に悪いと言われていますが、具体的にどう悪いのでしょうか。
アルコールが与える悪影響とは?
アルコールが与える悪影響として、肝臓(肝炎・肝硬変)をイメージすることが多いと思いますが、実際はこれだけではありません。
糖尿病や食道(食道静脈瘤)、胃(胃潰瘍・慢性胃炎)、小腸(十二指腸潰瘍)、感染症、心臓、骨・関節、神経系障害、脳萎縮、胎児問題、精神障害など、様々な影響があるのです。
他にも、アルコール絡みで人間関係が悪化したり、仕事の面でも業務能力が低下することがあります。
また、飲酒運転による交通事故も絶えません。
では、なぜそれでもアルコール依存症に陥ってしまうのでしょうか。
アルコール依存症になってしまう原因は?
アルコール依存症になってしまう背景には、酔いの力を求めてしまう幻想があります。
酒を飲みたいと思う時には、仲間と交流する、仕事の疲れを癒す、寂しさ、怒り、不満などのストレス発散などそれぞれ理由があると思います。
そして実際に、お酒を飲むことによって、開放感、高揚感、仲間との一体感、誇大感などを得ることができます。
これらお酒を飲むことによって得られる幻想は一時的なもので、酔いから醒めるとまた現実に戻ってしまいます。
現実に戻ったら、今度はまた、幻想を見たいがためにお酒を飲む・・・・・・こんなふうに何度も何度も繰り返すことで、精神的にも身体的にもアルコールに依存していくのです。
アルコール依存症から回復するためには
アルコール依存症から脱却するためには、自分の力で酔いの状態から醒めなくてはなりません。自分の力で断酒しなければ、意味がないのです。
- 専門病院での外来治療または入院
- 自助グループへの参加
- 睡眠薬や安定剤の服用
専門病院の外来治療で十分でなければ入院したほうがいい場合もあります。
一人での治療を困難に感じた場合は、同じように断酒のために頑張っている人たちの自助グループに参加するのもいいでしょう。
また、睡眠薬や安定剤の服用が効果的な場合もあります。
アルコール依存症はなかなか抜け出せるものではありません。自分でなんとかできると考えずに、きちんと治療を受けましょう。