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発達障害の人と共に働くということ③ ~発達障害の原因と、「障害」という言葉が招く誤解~

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会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。

会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。

あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?

もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。

「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。

第3回は、「想像以上に多い大人の発達障害の有病率」の続き、「発達障害の原因と、『障害』という言葉が招く誤解」を解説していきます。

発達障害の原因

発達障害がなぜ起こるのか、明確な原因はまだ分かっていません。

確実に分かっているのは、様々な症状が脳の発達のアンバランスからくる脳機能障害によって引き起こされている、ということだけです。

脳機能障害を引き起こす原因の一つとして考えられるのは、遺伝的な要因です。

両親や兄弟が発達障害だと、その人も高い確率で発達障害だと考えられています。

しかし、遺伝的要因があるからといって、必ずしも発症するわけではなく、ガンなどの他の病気と同様に、なりやすい性質が遺伝する、ということです。

他に、未熟児出生、妊娠中毒症、重症黄疸などの出産前後の周産期異常により、乳幼児期の間に、脳の発達が影響を与える疾患などで脳機能が損なわれたり、成長とともに身につくはずの言葉や社会性、感情のコントロールなどが未発達、未成熟、アンバランスになるとために起こるのでは、と考えられています。

そのため、本人の性格や家庭環境、心的外傷(トラウマ)体験などの環境的要因や心理的要因は直接の原因ではありません。

また、妊娠中、母親の飲酒や喫煙、インフルエンザなどのウイルス感染のほか、環境ホルモン(PCB、ダイオキシン)や重金属などによる影響なども注目されています。

「障害」という言葉が招く誤解

最近は、発達障害という言葉の認知度が高まってきましたが、障害名が独り歩きして、深い理解度に関してはあまり浸透していないというのが現状です。

幼少期からうまく生活をこなせないことから、いつも叱責、非難、疎外されたり、家庭内でも虐待やネグレクト(育児放棄)に繋がる例も多くみられています。

誤解を受けやすい原因として、次のような理由が考えられます。

  • ①さまざまな種類と程度がある。
    ADHD、ASD、LD
  • ②知的の遅れを伴わず、学業成績が悪くない。
  • ③症状なのか個人の特性や性格なのか分かりにくい。
  • ④年齢と発達段階によって障害のあらわれ方が大きく変化するため、病態が掴みにくい。
    幼少期、学童期、思春期、青年期、成人期
  • ⑤思春期以降にさまざまな二次障害・合併症があらわれ、元来の発達障害が隠れてみえにくい。
  • ⑥障害のあらわれ方と経過に個人差がある。
    ADHDは、「落ち着きがなくキレやすい」=「多動・衝動性優位」という一元的な認識が多いが、多動・衝動性は目立たず、不注意、片づけができないなどの症状がある「不注意優勢型」の別タイプがある。

⑥の場合、「不注意優勢型」の子どもは単に「だらしない子」「いつもぼーっとしている子」などと思われ、サポートの対象から外れ、そのまま放置されてしまいます。

このような無理解が、思春期・青年期になって二次障害や合併症を引き起こして、大人の発達障害の問題へ繋がってしまいます。

日本語では、ADHDを「注意欠陥・多動性障害」、LDを「学習障害」と訳します。

ADHDは英語で、「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」といい、「Disorder」という単語を「障害」と訳しているため、多くの人に誤解を与えがちであることは否定できません。

「Disorder」は、本来「日常生活上の多少のハンディ」という意味合いですが、「障害」という比較的強い印象を与える日本語に訳されたために、極端な問題であると連想されることになったとも言えます。

また、注意欠陥、多動性などの言葉がさらに行動に問題があるという誤解を生んでいます。

ADHDは行動面だけに問題があるのではなく、社会性、学習面、認知機能、運動機能などのバランスが不具合である状態をいい、それらの症状が社会生活に適応することのハンディになりやすいということなのです。

そのため、学者、研究者の中では、発達障害のことを「発達アンバランス症候群」と呼ぶべきだという声が増えてきています。

ADHD、アスペルガー症候群、自閉症などの子どもの脳は、能力がアンバランスなために、よくできること、できないことが極端で、中には非常に優れた能力を発揮する分野も多く、その能力は成人後も持続することが分かっています。

治療や指導を受けるほど深刻でなくても、ある分野のみが「何となくうまくいかない」と感じている人が多くいます。

そのような人たちも、トラブルを起こさないコツを身につければ個性を発揮できるようになっていきます。


 
次回、「発達障害を大人になってから気づくわけと、能力の発揮」へ続く


 

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