仕事をなかなか覚えられずに困っていませんか?
発達障害を持つ方、特にASD(自閉症スペクトラム)を持っている方は、仕事をなかなか覚えられないことがあります。
就職し、仕事を始めてばかりの頃は覚えることが多くて誰でも苦労しますし、職場の先輩もフォローしてくれるかもしれません。
しかし、いつまでも先輩がつきっきりというわけにはいきませんし、一度教えたことがわからない、ということが続くと呆れられてしまうかもしれません。
なんとか工夫して自分で仕事をこなせるようにしていきたいですよね。
同じことを何度も聞いてしまう理由
ASDを持つ人は、他者のペースに合わせるのが苦手な傾向があります。
自分のペースで考えられれば問題なく覚えられるのですが、人から仕事を教わる、つまり「他者のペースで情報を得る」こと自体が、ASDの人にとっては苦手な状況と言えるのです。
とくに、最近よく実施されている"OJT研修"は、ASDを持つ人にとってはかなりやりづらいものでしょう。
OJTとは、仕事を実際にやってみながら覚えていくという研修方法です。
そのため、教えてくれる先輩や、周囲で働く人のペースに合わせながらついていくことが要求され、その中でどんどん新しい情報が入ってくることになるのです。
こうなってしまうと、ASDを持つ人は混乱してしまい、説明されたことも頭に入ってきません。
さらに、ASDを持つ人には、口頭での説明を理解するのが苦手という特性を持つ人もいます。
これは、脳の機能の偏りが原因となる特性であり、耳で聞いて覚えようと努力しても難しい場合があります。
さらに、実戦しながら仕事を覚えていくとなると、「これ」、「それ」、「ここ」など指示語が多く、意味が曖昧な言葉が多く使われます。
こういった事情が重なると、ちゃんと聞いているにもかかわらずまったく意味が頭に残らない、ということになってしまいます。
また、人によってやり方や説明が違う、というのも苦手な状況です。
職場では、明確なルールがあるわけではなく、社員1人1人が経験に基づいて自己判断で進めている部分がよくあります。
同じ事柄について2通り違うように教えられてしまうと、どちらを選べばいいのかわからず、混乱してしまうでしょう。
ASDを持つ人は、同じ順序、同じパターンを好むため、このような様々なやり方、臨機応変の対応などは避けたいところです。
また、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人も、ひとつのことに集中するのが苦手なため、いろいろなところに意識がいってしまい、なかなか仕事が覚えられないということがあります。
何度も聞きに行くのも申し訳なくなってしまうし、かといって自分で考えてやってみたら全然駄目だったり・・・。
どうしたらいいのかな?
確実に少しずつ覚えるためには
誰でも、最初から完璧に仕事をこなすことはできません。
まず大切なのは、わからないところはわからないと伝えるということです。
特に、障害をオープンにしての就職であれば、特性上苦手なことを事前に伝え、配慮をもらうようにしましょう。
どこまで対応してもらえるかは相談となりますが、「仕事を教える人は1人に決める」「説明や指示は口頭だけでなく、紙やデータで見られるようにする」といった配慮をしてもらうだけでもかなり覚えやすくなるでしょう。
オープンでの就職でない場合でも、「わからないけど聞きづらいので放置しておく」は絶対にNG!
たとえ一度聞いたところであったとしても、わからないのであれば正直にそのことを伝え、教えてもらいましょう。
ただし、何度も何度も同じことを確認してしまっては印象が良くないのも事実。
少しずつでも覚えていけるように、自分の側でも工夫が必要になります。
1.必ずメモを用意する
もともとマニュアルなどがある場合は、コピーをしてそれに必要だと思ったことを書き加えていきましょう。
目で見てわかる情報であれば、写真を撮るのも良い方法です。
始めは質問よりも聞くことに専念し、最後に質問があればするようにしましょう。
ここで大事なのは教えてもらったら、記憶が鮮明なうちに覚えていることをすべて書き出すことです。
覚えているつもりでも、時間が経つと忘れてしまうこともあるので、わかるところを最初から全て書いてみましょう。
書き出しているうちに、わからないところや忘れてしまったところが出てくると思います。
その場合は、なるべく早めに、出来れば当日に聞き直しましょう。
書き出したものは自分のマニュアルとして、すぐに取り出せるようなところに置いておきましょう。
2.使うものを整理しておく
様々な業務を教わることになると思いますが、業務ごとに必要なものなどはそれぞれでファイル分けをし、ラベルを貼るなどして整理整頓しておくことも重要です。
新たに教わったことも加えていき、どの業務についての内容なら何を見ればいいかをはっきりさせておきましょう。
まとめ
ASDを持つ人は、人のペースに合わせることが苦手なため、口頭で教わったり、OJTで実戦形式で仕事を教わったりしても頭に入らないことがあります。
このような場合は、自分でマニュアルを作るように、教わったことを最初から書き出してみることが有効です。
また、障害をオープンにしての就職であれば必要な配慮事項を伝えたり、わからないところはなるべく早めに質問することも大切です。