前回の記事では、統合失調症とは?みたいな内容よりも先に、統合失調症の症状について記事としてまとめました。
今回は統合失調症の特徴・原因・治療などについてまとめてみたいと思います。
前回の記事⇒【統合失調症】幻覚や幻聴だけじゃない!統合失調症〜症状編〜
目次
100人に1人が発症すると言われている統合失調症とは
統合失調症は、Schizophrenia(スキゾフレニア)という英名から、直訳で「精神分裂病」と呼ばれていました。
しかし、精神や人格がバラバラになってしまうイメージがもたれやすく、2002年から統合失調症に改称されました。
約100人に1人が発症すると言われており、現在では病名自体は一般的に浸透しているイメージです。
しかし、統合失調症の症状として広く知られているのは、陽性症状の「幻覚」「幻聴」「妄想」などであり、逆に意欲低下などの症状が起きる陰性症状はあまり知られていないのが現状です。
そのため、陰性症状が出ているときには、家族なども含めた周囲から「怠けている」などと思われてしまう事があります。
さらに、統合失調症の特徴として、自分が病気であると認識する「病識」がない傾向にあることもあり、早期発見が遅れる事に繋がってしまうのです。
統合失調症は、一度発症すると多くの精神疾患と同じ様に慢性的な症状が現れることもありますが、厚生労働省の統合失調についてのページには以下の様に記載されています。
新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました(WHO 2001)。
厚生労働省|メンタルヘルス|統合失調症とは より
昔は、精神分裂病として恐れられていた統合失調症も現在では、薬物療法と心理社会的治療の進歩によって完全な回復を見込める病気となったのです。
ちなみに、後述しますが、統合失調症の発症の契機は生活環境の変化やそれに伴うストレスが主な契機ですが、驚くべき事にストレス社会と言われている日本だけではなく、国を問わず100人に1人、つまり約1%の割合で統合失調症と見られる症状があると言うのです。
統合失調症の原因は?
統合失調症の原因は現在では、はっきりとは分かっていません。
しかし、いくつかの要因があるとされています。
- 遺伝的要因
- 生育環境
上記2点の要因があるとされていますが、確実な原因とは言えないのが現在の状態です。
その他にも、統合失調症を発症した患者の脳の構造、特に前頭葉と側頭葉の体積が他の人よりも小さい傾向にあるなどの報告もあります。
幻覚などの症状は脳内物質の影響
統合失調症自体の原因ははっきりとはしていませんが、「幻覚」「幻聴」などの症状については、神経伝達物質の異常によって起こるものだと言われています。
ドーパミンやセロトニンなどの脳内物質のバランスが乱れて神経のネットワークにトラブルが生じる事で脳の機能障害を引き起こします。
統合失調症の治療法は?
統合失調症の治療法は、「薬物療法」と「心理社会的治療」の両方を行って行く事が重要になってきます。
薬物療法では、上述した「脳内物質のバランスの乱れ」を整える役割がありとても重要です。
薬物療法においては、「抗精神病薬」という薬物が用いられる事が多く、以下の様な作用が期待できます。
- 幻覚・妄想などの陽性症状を改善
- 不安・不眠・興奮・衝動性を軽減する鎮静催眠作用
- 感情や意欲の低下などの陰性症状を改善するための精神賦活作用(せいしんふかつさよう)
避けては通れない副作用も・・
このように、薬物療法は統合失調症の陰性症状・陽性症状に対して効果的ではありますが、その一方で服薬による副作用が出てくる場合があります。
よく見られる副作用としては、以下の様な症状が見られます。
- 手足がムズムズする(アカシジア)
- 手や足・口や舌が震える
- 歩行が小刻みになる(パーキンソン症状)
- 首や舌がひきつれる(急性ジストニア)
- 立ちくらみ(起立性低血圧)
- 目の焦点が合わない
- 日中の眠気や頭がボーッとする感覚
副作用を抑える薬も同時に処方される場合が多いですが、これらの副作用は、同じ薬を飲んでも出る人出ない人など個人差があり、薬物療法においては薬の調整が非常に重要になってくるのです。
年単位での治療が必要になってくる
統合失調症は、症状の重さや薬物療法の副作用など、回復まで時間がかかり辛い病気ではありますが、冒頭で書いた様に時間はかかるものの回復しない病ではありません。
前回の記事でも載せた回復までの経過グラフがこちらです。
再発を防止する為に!
統合失調症は、適切な治療をすることで徐々に回復に向かって行きます。
しかし、医師との相談もなく自分の判断で服薬を中止してしまったり、完全に回復したと思い焦って過度な仕事をしたりすると、再発の危険性が非常に高まります。
抗精神病薬には、統合失調症の症状を抑える効果だけでなく再発を予防する効果もあります。
回復期に至った患者が、薬物療法を中止する事で急性期のような陽性症状が再発してしまう確率は数年で60%〜80%と言われています。
再発を防止する為にも、回復したと自分で感じても、医師との相談のもと徐々に薬を減らしていくなど、常に再発の危険性を意識して行く事が大切です。
今回は、統合失調症についての原因や治療などについてまとめましたが、多くの精神疾患と同様に、回復に向かう為には周囲の人の支えが必要になってきます。
特に家族と同居している場合は、家族全員が病気についての知識をつけるなどの協力が必要です。
もしその他の理由で、家族などを頼れない場合は地域活動センターなどの社会資源を活用していくことも検討するといいでしょう。
マンガでわかる!統合失調症
最後に、統合失調症の患者本人やその周囲の方に非常に参考になると感じた本を紹介して終わりにしたいと思います。