いきなりですが、「アルコール中毒」と「アルコール依存症」の違いってなんだか分かりますか?
実は、「中毒」と「依存症」は、似たように見えてもまるで別の概念なんです。
その説明の前に、アルコール依存症チェックで、依存度のチェックをしてみませんか?
全部で10項目の質問に回答して点数を合計してください。
目次
アルコール依存症チェックリスト
最近6か月の間に、以下のようなことがありましたか?
1.食事は1曰3回、だいたい規則的に取れている | |||
2.肝臓病、心臓病、糖尿病のいずれかの診断を受け、その治療をしたことがある | |||
3.お酒を飲まないと寝付けないことが多くある | |||
4.二曰酔いで仕事を休んでしまったり、大事な約束なのに破ってしまったことがある | |||
5.「お酒をやめなきゃ・・・」と感じたことがある | |||
6.「あなたはお酒を飲まなければいい人なのに~」とよく言われる | |||
7.家族に隠れてお酒を飲むことがある | |||
8.お酒が切れると、汗が出たり、手が震えたり、いらいらしたり、眠れなかったりと、苦しく感じる | |||
9.朝や昼間からお酒を飲んだことが何度かある | |||
10.「実際、お酒を飲まないほうが自分はよい生活が送れるんじゃないか」と思う。 | |||
あなたの合計点数は
チェックリストの結果はあくまで参考に!
いかがでしたか?今回は以下の様な結果で採点しています。
合計点が1~3点:要注意
合計点が0点:正常
このチェックリストはあくまで参考です。
気になることがあれば、アルコール依存症の専門病院を受診するといいかもしれません。
では、「中毒」と「依存症」との違いを見ていきましょう。
アルコール中毒とは
アルコール中毒とは、アルコールを飲んだらろれつが回らなくなったり、記憶力が低下したり、思うように行動ができなくなったりなど、心身に悪影響を及ぼしている状態のことを言います。
食中毒に代表されるように、「中毒」とは、悪いものを摂取して、その毒性にあたってしまうことを指します。
お酒を飲みすぎる人のことを、俗に「アル中」などと呼んだりしますが、実際にはアルコール中毒というのはそのような場合には当てはまりません。
アルコール依存症とは
アルコール依存症がアルコール中毒と大きく異なっているのは、アルコールを飲用していない、しらふの状態でも定義されるところです。
症状が顕著にあらわれないしらふの状態での明確な定義があるわけではありませんが、臨床現場では、アルコールの摂取により、精神的、身体的依存が成立してしまっている人を「依存症」としています。
アルコール依存症の定義の目安
- 飲酒するとどんな場面でも酔っぱらってしまい、その場にあった飲み方ができない
- アルコールを求めた行動が周りからよくわかり、アルコールの確保に神経を使う
- 一気に2~3杯飲まないと落ち着かない
- アルコールに強くなり、飲酒量が増加する
- アルコールが切れると、イライラしたり、手が震えたり、吐き気、発汗などの症状がでる
- 音などに敏感に反応する
- 離脱症状の繰り返しにいらだちや不安を感じ、お酒を飲むことで症状を回避しようとする
2013年に行われた日本の成人の飲酒に関する全国調査によると、アルコール依存者の生涯経験者数は、男性で1.9%(94万人)、女性で0.2%(13万人)、併せて107万人。
疑いのある人を含めると、440万人いると言われています。
また、アルコール依存症の人の平均寿命は、52~53歳と短命です。
飲みすぎは身体に悪いと言われていますが、具体的にどう悪いのでしょうか。
アルコールが与える悪影響とは?
アルコールが与える悪影響として、肝臓(肝炎・肝硬変)をイメージすることが多いと思いますが、実際はこれだけではありません。
糖尿病や食道(食道静脈瘤)、胃(胃潰瘍・慢性胃炎)、小腸(十二指腸潰瘍)、感染症、心臓、骨・関節、神経系障害、脳萎縮、胎児問題、精神障害など、様々な影響があるのです。
他にも、アルコール絡みで人間関係が悪化したり、仕事の面でも業務能力が低下することがあります。
また、飲酒運転による交通事故も絶えません。
では、なぜそれでもアルコール依存症に陥ってしまうのでしょうか。
アルコール依存症になってしまう原因は?
アルコール依存症になってしまう背景には、酔いの力を求めてしまう幻想があります。
酒を飲みたいと思う時には、仲間と交流する、仕事の疲れを癒す、寂しさ、怒り、不満などのストレス発散などそれぞれ理由があると思います。
そして実際に、お酒を飲むことによって、開放感、高揚感、仲間との一体感、誇大感などを得ることができます。
これらお酒を飲むことによって得られる幻想は一時的なもので、酔いから醒めるとまた現実に戻ってしまいます。
現実に戻ったら、今度はまた、幻想を見たいがためにお酒を飲む…。
こんなふうに何度も何度も繰り返すことで、精神的にも身体的にもアルコールに依存していくのです。
また、アルコール依存症の人は、親に飲酒者が多いことが指摘されています。
親の姿を見ながら成長することで、飲酒への抵抗がなくなったり、体質が似ていることも考えられます。
一方で、親の泥酔した姿が反面教師となり、全く飲まないという人もいます。
他に、お酒を断れない、人と話す時にアルコールの力を借りるなど、「性格」的な問題。
飲酒が必須な職業、寂しさや孤独、家族の問題からの一時的逃避など、「環境」的な問題。
原因は、人それぞれに違いがあります。
最近のアルコール依存症のスタイル
この20年ほどで、生活スタイルや娯楽も多様化する中で、お酒の飲み方も変わってきています。
そのため、連続飲酒や社会的問題行動があまり目立たない「静かな依存症患者」が増加してます。
昔のように大騒ぎする患者はあまり見られなくなり、おとなしいアルコール依存患者が、家族や上司に連れてこられるようになっているようです。
最近の特徴として、アルコール依存だけではなく、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症、パーソナリティ障害、認知症などの病気を併せもっていたり、借金や家族関係のトラブル、失業、孤独など、様々なケースを抱えているケースが多くなっています。
アルコール依存症から回復するためには
アルコール依存症から脱却するためには、自分の力で酔いの状態から醒めなくてはなりません。
自分の力で断酒しなければ、意味がないのです。
- 専門病院での外来治療または入院
- 自助グループへの参加
- 睡眠薬や安定剤の服用
専門病院の外来治療で十分でなければ入院したほうがいい場合もあります。
一人での治療を困難に感じた場合は、同じように断酒のために頑張っている人たちの自助グループに参加するのもいいでしょう。
また、睡眠薬や安定剤の服用が効果的な場合もあります。
アルコール依存症は、ある程度治療が進むと、一見治ったように見えますが、内心で「お酒を飲みたい」という気持ちは一生続きます。
回復には、一般的に3年かかると言われます。
自分でなんとかできると考えずに、きちんと治療を受けましょう。
よくわかる依存症,榎本 稔,2016/0810,株式会社主婦の友社