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妄想性パーソナリティ障害とは?① ~人を信じられない!妄想性パーソナリティ障害の人が抱えるトラブルとその特徴~
目次
統合失調症とは違う妄想性パーソナリティ障害
「周囲の人が自分の悪口を言っている…」
などの妄想は、統合失調症の人にも同じような症状がみられますが、統合失調症は、
「自分が誰かに操られれている」
「誰かに命を狙われている」
などの、非現実的な妄想をするのが、妄想性パーソナリティ障害との違いです。
妄想性パーソナリティ障害には、非現実的な妄想はみられません。
妄想性パーソナリティ障害は、統合失調症とは違うのです。
ただし、妄想性パーソナリティ障害を放置してしまうと、統合失調症に繋がったり、うつ病を併発してしまうこともあります。
妄想性パーソナリティ障害の原因は?
妄想性パーソナリティ障害の発症には、幼少期の生育環境が大きく関係していると言われています。
強いショックが原因!
幼少期に、
- 親からの愛情を十分に受けることができなかった
- 親のしつけが厳しかった
- 親から裏切られた経験がある
- 親が騙されるのを目撃した
など、強いショックや、信頼関係がうまく築けないような経験があると、それが妄想性パーソナリティ障害の発症の原因になってしまうようです。
また、仕事の失敗、人間関係のストレスなどが重なると、妄想性パーソナリティ障害を発症しやすい傾向にあります。
他にも、大きな病気や環境の変化、誰かに騙されたなどの、身体的・精神的な疲れが溜まると発症しやすくなります。
さらに、遺伝的要素もあるようです。
家族に統合失調症などの人がいると、妄想性パーソナリティ障害の発症率が高いようです。
妄想性パーソナリティ障害の治療法は?
現在のところ、妄想性パーソナリティ障害に有効な治療法はありません。
しかし、患者に協力する意思があるなら、認知行動療法などの心理療法が有効になります。
パーソナリティ障害の特徴のひとつに、本人が病気を認めていない、気づいていないという特徴があります。
対人関係がうまくいかないのも他人のせいだと思っているため、自分から病院を受診することはほとんどありません。
妄想性パーソナリティ障害の人も同様で、受診したとしても、医師のちょっとした言動にも疑いを感じてしまいます。
そのため、認知行動療法などの心理療法を行うには医師との信頼関係をしっかり築いてからになります。
心理療法で話し方や行動など、少しずつコミュニケーションの向上を目指していきます。
また、不安やうつ症状が強い時には、薬物療法が用いられます。
その他、カウンセリングなども有効ですが、妄想性パーソナリティ障害の人はなかなか治療を受け入れようとしません。
むしろ、医師の診断の方がおかしいと疑い、と訴えることもあります。
妄想性パーソナリティ障害の患者本人より、その周辺の人の方が疑われたり、振り回されることに疲れ、受診する人が多いようです。
そういった意味では、妄想性パーソナリティ障害は、治療するのが難しい病気とも言えます。
周囲の人の接し方
妄想性パーソナリティ障害の人と付き合う場合、親しくなり過ぎず、適度な距離間を保つことが大切です。
妄想性パーソナリティ障害の人は、とてもエネルギッシュで頼りになるため、最初はとても親切で力を貸してくれますが、深く付き合うと、逆に精神的に頼られるようになります。
賢明な方法は、中立的な立場を維持し、目立たない存在であり続けること。
正面から否定したり、戦う意志を示してしまうと、妄想性パーソナリティ障害の人のスイッチを入れてしまうことになります。
どちらかが支配力を持った存在にならないために、競ったり、戦うつもりはないことを、はっきり言う必要があります。
周囲の人にしてみても、自分の権利を主張し、守ることはもちろん大事ですが、度が過ぎると健康やメンタルを損なうことも繋がります。
妄想性パーソナリティ障害の人との戦いに勝つより、許すという選択肢も必要になってくるかもしれません。
本人の克服ポイント
妄想性パーソナリティ障害の人の猜疑心や他人の行動の裏まで読み取ろうとする症状は、同時に他人の気持ちを敏感に察知し、気配りする能力があるとも言えます。
親密ではない関係性では、こうした力がうまく活かされることも多いものです。
また、妄想性パーソナリティ障害の人は、秩序や階級、法に関心を示したり、その分野で活躍することも多く、仕える相手さえ間違わなければ、強い忠誠心を示します。
その意味でも、法律は政治的な分野に適性を持つとも言えます。
人に負けることが許せない妄想性パーソナリティ障害ですが、戦う人生は結局不幸である、ということを頭に置き、戦いに勝つより、相手を許す勇気を持ちましょう。
妄想性パーソナリティ障害まとめ
妄想性パーソナリティ障害は、幼少期にショックを感じたり、仕事や対人関係でのストレス、遺伝などが発症の要因と考えられています。
本人的には、自分が病気だという自覚がないため、治療することが困難なところがあります。
ですが、治らない病気ではありません。
認知行動療法などの心理療法、薬物療法などを用いて根気強く治療していくことが大切です。
参考:
パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか, 岡田尊司, PHP研究所,2004/5/31