依存症とは、何かに頼ったり、何かを続けないといられない、そんな症状が何度も繰り返される症状のことです。
依存症は、アルコールや薬物など、物質に対してだけではありません。
人間関係においても、依存が発生することがあります。
そこで、今回は「家族依存症」について詳しくみていきたいと思います。
目次
家族依存症とは?
家族依存症とは、簡単に言うと、迷惑をかけ、かけられる関係が成り立っている状態のことです。
この家族依存症は、アルコール依存症や、DV、引きこもりのある家庭によく見られます。
迷惑をかける側は、家族が自分の世話をしなければいけない状況を続け、また、迷惑をかけられる側も、自分が支えていることに生きがいを感じているような関係が成り立っています。
このような状態を「共依存」と言います。
最近では、親子間の共依存が増えています。
親は子どもに何でもしてあげたい、社会から子どもを守ってあげたいという気持ちから、歪んだ愛の形になってしまいます。
また、子どもも親が何でもしてくれるのが当たり前になってしまい、親から自立できなくなってしまいます。
家族依存症になると…
ストレスを感じやすくなると言われています。
患者本人は、「ああして欲しい。こうして欲しい」という欲求が強く出て、思い通りにならないと、不安や不満、寂しさや自己嫌悪などのマイナスな感情が出てきます。
自分が相手から頼られている場合、相手が悪くても、
「自分が悪いんだ…。自分がもう少ししっかりしていれば…」
などと思いこんでしまったり、自分のことよりも相手のことが気になってしまうため、不安定な生活になりやすくなります。
家族依存症の治療法は…?
家族依存症は、家族関係全体の歪みが原因であることが多いと考えられています。
そのため、まずは臨床心理士やカウンセラーなど、第三者を通じて家族関係のあり方を再検証しましょう。
アルコール依存症のケース
アルコール依存症の患者がいる場合、家族の理解と協力が欠かせません。
まずは、アルコール依存症の特徴や治療上の注意点などを家族も学ぶことが重要です。
家族同士(夫、妻、親)が「共依存」になっていることが多いため、自分自身が「アルコール依存症をつくる家族である」ということを認識してもらうことが必要です。
例えば、いそいそと晩酌の支度をする「面倒見のいい妻」が、いかに本人のためになっていないかを知ってもらわなければなりません。
アルコール依存症の場合、家族や周囲の人が「やっぱりおかしい」と異変に気づくのは、仕事上の問題や家庭内のトラブル、離脱症状の出現などいろいろあります。
しかし、本人は「少し飲み過ぎたかな」と感じる程度で依存症であるという自覚(病識)がありません。
そこで、初めは家族や周囲の人だけでもいいので、クリニックなどへ相談に行くことが大切です。
そして、患者本人が治療を始めてから回復まで、家族や周囲の人が水先案内人をつとめることが基本になります。
詳細はちら → アルコール依存症とは? ~分かっていてもやめられない…まずはアルコール依存症度をチェック!~
DV(ドメスティック・バイオレンス)のケース
夫が妻に(あるいはその逆も)暴力をふるい、それをやめることができないのが、DV(ドメスティック・バイオレンス)です。
暴力を受けた妻は、一旦は夫から逃げますが、しばらくするとまた夫の元に帰っていきます。
夫は「もう殴ったりしない」とひたすら謝り、反省して非常に優しくなります(ハネムーン期)。
しばらくは平穏な生活が続きますが、次第に夫の方に不満や緊張が溜まっていきます(充電期)。
そして、何かがきっかけとなり、再び暴力をふるってしまいます。
暴力 → ハネムーン期 → 充電期 → 暴力
DVは、このサイクルが決まっていると言われ、多くは、このパターンを繰り返すようです。
妻が経済的に自立していないこと原因のひとつではありますが、DVが「共依存」の病気であることを気づいていないという点もあります。
暴力が繰り返されることで、妻はケガだけでなく、おびえや無力感に襲われ、うつ病や神経症になってしまうこともあります。
そこで、暴力を受けている側は、まず逃げることを優先します。
そして、DVがどのような病気であるかを説明し、夫婦間の距離を取ること、暴力を受けるきっかけを思い出し、極力あらためるようにします。
夫婦二人揃って治療することが理想ですが、実際はそうもいかないことがほとんどのようです。
まずは、「保護センター」などの駆け込み寺に逃げ、相談することが大切です。
引きこもりのケース
仕事や学校へ行かず、家にこもりっぱなしで、長期間、社会や家族との接触を断って拒否している状態を引きこもりと言います。
引きこもりの背景には、家族全体の病理があると言われています。
本来、子どもは10歳くらいから自我に目覚めるため、甘やかすばかりではいけないのですが、核家族化が進み、家族構成が単純になると、その分だけ家族が情緒的に強く結びつくようになってしまいます。
子どもが少ないため、母親は育児と教育に全力を傾け「愛という名の支配」をするようになり、母子の相互依存関係はますます強くなり、自我の発達、成長が未成熟な段階にとどまってしまう危険性があります。
つまり、引きこもりは、子どもだけでなく親の側にも問題がある、ということです。
今の状態が「共依存」であることを認識し、子どもはある年齢になれば自立するよう仕向けるようにしなければなりません。
他の依存症と同じように、自立に向け「突き放す」ことがいかに重要か、必要かを理解しましょう。
引きこもりは「家族全体の病気」であることを気づくところから治療が始まります。
まとめ
どんな依存症でも、「自分は依存症だ」と自覚し、「依存しても不安は解消されない」という事実を認識することが治療の第一歩です。
家族依存の場合、そのような環境を作ってしまったことにも原因があります。
「これからどのようにしていくか」を、関係者全員でしっかり考えていくことが大切です。
参考:
よくわかる依存症,榎本 稔,2016/0810,株式会社主婦の友社