「現代ストレス社会」と言われる今。
ストレスフルな環境で働き続けるためには、自分で自分を守る工夫が必要です。
その工夫のキーワードが「感情」!
「感情とうまく付き合うための処方箋」では、仕事で感じる「怒り」「悲しみ」「落ち込み」「不安」の4つの「感情」を味方につけて、ストレスから自分を守る方法をご紹介します。
第6回は、「【怒り】~大事なものを守るための行動を決める4つのステップ~」の続き、「【怒り】~DESC法…関係性を壊すのではなく“つくる”ように怒りを表現!~」を解説していきます。
目次
【怒り】~DESC法…関係性を壊すのではなく“つくる”ように怒りを表現!~
前回は、傷つけられている大事なものをヒントに、自分でできる行動や振り返り方をご紹介しました。
しかし、自分でどうにかできる場合だけではなく、相手に伝える必要がある場合もあります。
「上司に6割の段階で見てもらうことを提案する場面」などがそれにあたります。
ただし、カッとなっている時は、どうしても言葉や態度が攻撃的になりやすいので注意が必要です。
「怒り」そのままの表現では、相手との関係はもちろん、自分の立場も悪くしてしまう恐れがあるので、せっかくの提案も聞いてもらえなくなるかもしれません。
大切なのは、自分の主張を伝えるだけでなく、相手の主張も尊重するコミュニケーション。
攻撃的ではない言い方をしたり、自分だけが我慢するのではなく、傷つけられた大事なものを守るために主張する…そんなコミュニケーションスキルが必要になります。
そのための技術を「アサーティブネス・スキル」と言います。
このスキルでは、「怒り」を表現する時に、4つの段階を踏みますが、これらの頭文字をとって「DESC法」と呼びます。
Explain…自分の主観的な気持ちや考えを説明する
Suggest…相手に臨む行動や解決策を提案する
Choose…相手の肯定的、否定的な反応を予測し、代替の選択肢を示す
ステップ①Describe:とにかく客観的に状況を描写
その時の状況をとにかく客観的に描写します。
自分から見ても、相手から見ても、第三者から見ても、誰が聞いても「確かにそうだ」とうなずける事実だけを伝えるのがポイントです。
例えば、打ち合わせに遅れた相手に、
という風に言ったとすると、こんな返事が返ってきたりしないでしょうか。
…などなど…。
反論された上に、言い訳がズラズラと並べられてしまうかもしれません。
では、こんな切り出し方ならどうでしょうか。
これに「でも」と、反論できる人はいませんよね。
こんな風に、だれが聞いても「確かにそうだ」と言える客観的な状況描写から始めれば、相手を反論する姿勢ではなく、こちらの話を聞いてもらいやすい姿勢に変えることができます。
ステップ②Explain:メッセージとで気持ちと考えを表現
相手が話を聞きやすい状態を作ったら、今度は自分の考えや気持ちを伝えます。
ここは主観的な内容でOK!
ポイントは、「あなたは」から始まるYOUメッセージではなく、「私は」から始めるIメッセージを使うことです。
例えば、遅刻した相手に「あなたがだらしないから…」と、YOUメッセージを伝えてしまうと、再び反論と言い訳を呼んでしまいますが、Iメッセージを使って、
「私は●●と考えていました」
と、伝えます。
人ぞれぞれの考え方や感じ方、気持ちなので、「あなたはそう感じていないはずだ!」と反論されることはありません。
ステップ③Suggest:解決案を提案型で
今後、同じ状況になった時、相手にどんな行動をとって欲しいか?
相手に望む行動や妥協案、解決案を提案します。
ポイントは2つ。
1つ目は「具体的・実現可能な提案にすること」。
カッとなっていると、つい「ちゃんとしてください!」とやってしまいがちですが、これでは漠然としすぎていて、相手がちゃんとしてくれる可能性が低くなってしまいます。
具体的に「●●する」と、行動レベルで表現します。
現実的に実行できそうな内容にするのもポイントです。
2つ目は、「提案の形であること」。
「次からは●●してください!」と指示、命令の形を使いがちですが押し付けはNGです。
自分の主張も相手も主張も尊重するコミュニケーション、という形をとりましょう。
例えば、
という提案型だとgood!
相手の了承も引き出しやすくなります。
ステップ④Choose:相手にも選んでもらう
ステップ③の提案に対して、相手がYESとNOどちらも答える場合があることも想定しておきます。
NOと言われた場合のための代替案を用意しておきましょう。
「提案したら、当然相手がそれを受けいれてくれる」と考えがちですが、NOと言われた時に新たな「怒り」を呼んでしまいます。
自分の気持ちだけでなく、相手のことも同じように尊重するコミュニケーションスキルだからこそ、この段階があります。
では、「コピー機まわりの整理を頼まれた」例で、4ステップを試してみましょう!
DESC法の活用例
「前回のコピー機のメンテナンスも私が担当しました。今、金曜納期の仕事を抱えています」
「納期が近づいているので余裕がなく、メンテナンスをしていると間に合わなくなるのでは…と心配しています」
「その時々で、部署の中で余裕がある人に頼んでもらえませんか?」
「もしくは、こういった隙間の仕事の担当をどう決めていくか、部署のミーティングで話し合うなど、別の方法も検討してもらえるとありがたいです」
最初からすべてのステップを伝えるのが難しい場合は、まず【①Describe(描写する)】と、【②Explain(説明する)】の2つだけ取り入れてみてください。
これだけでも、関係を壊すことは防げます。
また、「この人なら少しくらい失敗しても大丈夫」という相手に練習してみるのもよい方法です。
練習を繰り返して、「怒り」を表現することが上達すれば、「腹が立ってもうまく伝えられる」という感覚が持てるようになります。
また、【②Explain(説明する)】で、率直に「私にとって大事なことなので、腹が立ちます」と伝えるのも、実は有効です。
部下は後輩を叱る時、ただ叱るだけでなく、
「私にとって、この企画は一緒に成功させたい大事なものだから」
こう伝えることで、相手の受け取りやすさが変わってきます。
この「アサーティブネス・スキル」は、腹が立った時だけでなく、伝えにくいことを相手に伝える時にも役に立つので、是非活用してみてください!
次回は、【怒り】~「●●すべき」という考え方から自分の怒りのツボを知る~、へ続く