「現代ストレス社会」と言われる今。
ストレスフルな環境で働き続けるためには、自分で自分を守る工夫が必要です。
その工夫のキーワードが「感情」!
「感情とうまく付き合うための処方箋」では、仕事で感じる「怒り」「悲しみ」「落ち込み」「不安」の4つの「感情」を味方につけて、ストレスから自分を守る方法をご紹介します。
第10回は、「【悲しみ】~大切なのものを取り戻せるなら、行動しよう!~」の続き、「【悲しみ】~「さようなら」の5ステップを知る~」を解説していきます。
目次
【悲しみ】~「さようなら」の5ステップを知る~
前回は、失くしかけたものを取り返すための3ステップをご紹介しました。
しかし、取り返せる可能性がある場合ばかりではありません。
悲しみがあっという間に消えたり、解放されるような方法は、残念ながらありませんが、前に進むために役立つ方法はあります。
ドイツの精神科医キューブラー・ロスが、人は大切なものを失う経験をしたあと、どんなプロセルをたどるのか、「喪失の5段階」というプロセスを紹介しています。
リストラ、離婚をはじめ、こちらで挙げたような自分の理想・時間・価値観・可能性・評価や能力などが失われた場合も、似たようなプロセスをたどります。
この大事なものに「さようなら」するプロセスを進んでいくと、人は少しずつ前に進むことができるようになります。
それでは、「急な仕事の引継ぎ」の例をもとに、5つのプロセスを見てみましょう。
第1段階:【否認】…「認めたくない!」
初めは、「失ったことを認めたくない」という段階。
自分に起こったことが受け容れられず、「そんなはずはない」と否認します。
打ち込んできた仕事を急に引き継ぐように言われ、表面上は「わかりました」と言ったとしても、気持ちの面ではすぐに「はい、そうですか」と割り切ることはなかなかできません。
「どうして?」
「何かの間違いでは?」
これらの言葉が浮かんできたりします。
この段階は、感情にとってクッションのような役割を持っていて、いきなり事実を受け容れるにはショックが大きすぎるため、否認することで私たちを守ってくれていると言えます。
第2段階:【喪失の認識と怒り】…「なんでこんなことに!」
少しずつ「失くした」と認めざるをえなくなり、他者や社会に怒りの感情が出てくる段階。
打ち込んできた仕事を手放さなければならない状況に対して、
と、会社や上司に腹が立ってきます。
怒りから八つ当たりしてしまうこともありますが、周囲との関係が悪くなるため、他の方法をとれるようにしたいところです。
ちなみに、「怒り」が出てきたというのは、少しずつ「失った」ことを受け容れ始めたことの表れでもあります。
第3段階:【取引】…「そこをなんとか…!」
失ったものを取り戻すために、「もし、〇〇だとしたら…」と、あれこれ考える段階。
「言うことをもっと聞くので、後輩に引き継ぐのは待ってもらえませんか?」
など、失ったものを取り戻そうとして、頭の中でグルグルと考え続けたり、実際に周囲へ訴えかける場合もあります。
第4段階:【悲しみと引きこもり】…「やる気がしない…」
「なんとか取返せないか?」と、もがいて、取引の段階を過ぎると、
と、失ったことと向き合う段階に入り、深い悲しみが訪れ、落ち込みます。
打ち込んできた仕事を最後までやり遂げられない、ということが少しずつ分かってきて、
と、意味を感じにくくなります。
結果、人付き合いする気力もなくなり、孤立しやすくなったりします。
第5段階:【受容】…「悲しいけれど、そろそろ次へ…」
1~4までのプロセスを行ったり来たりしながら、最後は失ったことを受け容れることができるようになります。
「やりたかった仕事にはもう戻れない」という事実を受け容れ、少しずつ次の仕事への気力が出てきます。
次回、【悲しみ】~「涙を流す」のは悲しみを癒すのに効果アリ~、へ続く