「現代ストレス社会」と言われる今。
ストレスフルな環境で働き続けるためには、自分で自分を守る工夫が必要です。
その工夫のキーワードが「感情」!
「感情とうまく付き合うための処方箋」では、仕事で感じる「怒り」「悲しみ」「落ち込み」「不安」の4つの「感情」を味方につけて、ストレスから自分を守る方法をご紹介します。
第13回は、「【落ち込み】~うまくいかなかったこと以外でも自信がなくなり抜け出せない~」を解説していきます。
【落ち込み】~うまくいかなかったこと以外でも自信がなくなり抜け出せなくなくなる~
あなたはこんな経験(または似たような経験)ありませんか?
異動から約半年経ったころ、初めて行く取引先で新商品の説明を任されました。
説明はスムーズに終わり、同行した課長からも「分かりやすかった」と言われたものの、Aさんは、質問にうまく答えられずに終わってしまったことが気になっていました。
「質問されて満足に答えられないなんて、自分は営業に向いていないのかな…」
「課長もガッカリしたはずだ」
「営業成績は順調だけど、自分の能力では顧客を満足されるのは無理」
「ボクの評価は落ちていく一方だ…」
帰りの電車の中でも、夕食を食べている時でも、ああすればよかった、こうすればよかったという考えが浮かんできます。
週末、友人と会っている時も、仕事のことを思い出して、休みを楽しむことができません…。
このように、物事が期待通りに進まなかった時や、目標が達成できなかった時、私たちは自分の能力や存在価値に自信を持てなくなります。
思い通りにいかなかったこと以外のことにも自信がなくなり、頑張るエネルギーや気力が湧かなくなってしまいます。
そんなエネルギー切れになってることを表すのが「落ち込み」という感情です。
人は落ち込んだ時、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と自分を責め続けます。
自分の強みが見えにくくなり、必要以上に自分の能力を低くみてしまいます。
積極的な行動もとれなくなるため、落ち込んだ状態から抜け出すことができなくなってしまいます。
【反すう思考】落ち込みを長引かせる
エネルギーが切れてしまっているので、本来ならエネルギーの充電、つまり自分を休めることが必要になります。
しかし、いくら休んでも、落ち込みから回復できずに長引いてしまうことがあります。
「もう少し早く連絡しておけば、結果は変わったかもしれない」
「プレゼンであの資料も入れておけばよかった…」
などなど。
このように、過去の失敗や自分の欠点を繰り返し考え続ける思考パターンを「反すう思考」といいます。
「反すう思考」は、「考えよう!」と思って考えているのではなく、お風呂入っていても、ベッドに入ってからも自動的に浮かんできて、「考えたいわけではないのに、つい考えてしまっている」という状態です。
そのため、自分が「反すう思考」をしていること自体に気づくのが難しく、繰り返し考え続けることをやめられなくなってしまいます。
そして、「ああすればよかった」「こんなことしなければよかった」と、変えることができない過去の自分を繰り返し責めることで、新しいエネルギーが湧いてこなくなります。
また、他人が自分を責める声によって、一旦落ち着いた「反すう思考」が再発することもあります。
「なんでそんなこともできないんだ!」
(課長のいう通り、こんなことではダメだ…。仕事を続ける自信がない…)
このように、自分を責める誰かの声を取り込んで、頭の中にその人が乗り移っかのように「反すう思考」を膨らませてしまいます。
このような「反すう思考」は、うつ病に発展するリスクを高めます。
【反すう思考】ネガディブな影響力を増す
「反すう思考」をそのままにしておくと、どんどんパワーアップして影響力を増していきます。
最初は「ああすればよかった」「こんなことしなければよかった」と、過去のことを思い出して自分を責めるだけだったのが、その範囲が広がっていき、ポジティブな面や事実を無視する考え方や、未来を極端に悲観する考え方へと発展してしまいます。
冒頭のAさんのように、「もっと事前に調べておけばよかった」という過去の失敗を責める考えだけでなく、「評価が落ちるに違いない」と、将来を悲観する考えが浮かぶ一方、「これまでの営業成績は順調だった」というポジティブな面がすっかり見えなくなってしまいます。
極端に悲観的な考え方をしていると、判断力にも影響が出てしまい、自分の能力を低く見積もったり、せっかくのビジネスチャンスを逃したり、新たな失敗を生むことにも繋がってしまいます。
次回、【落ち込み】~「考えない」「忘れよう」とするほど、かえって思い浮かべてしまう~、へ続く