発達障害という言葉を聞いたことはありますか?
発達障害とは、生まれつきの脳の障害のために、
- 言葉の発達が遅い
- 対人関係をうまく築くことができない
- 特定分野の勉学が極端に苦手
- 落ち着きがない
- 集団生活が苦手
といった症状が現れる精神障害の総称です。
発達障害と一口で言っても、その特性はそれぞれ異なります。
その特徴を細かくあげていくと、誰しもが自分でも身に覚えのあるような特徴も多いです。
その中でも代表的に分類される3つの障害とその特徴を分類していきます。
- アスペルガー症候群(ASD)
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- LD(学習障害)
それでは、上記3つの障害の症状・特徴を見ていきましょう。
目次
アスペルガー症候群(ASD)
言語・認知能力的にはあまり遅れはないが、社会性やコミュニケーション・社会的想像力に欠ける特徴が見られる。
■社会性の障害
友達とうまく関われない。友達とトラブルになりやすい。等
■コミュニケーションの障害
一方的でまとまりのない話をしたり、冗談を真に受けてしまう。表情が乏しい。等
■社会的想像力の障害
他人の感情が理解出来ない。経験した事がないことを想像できない。こだわりが強い。等
■物事にこだわる
好きな事や、特定のジャンルに関して、強いこだわりを持つ。驚異的な集中力を発揮する。等
その他に、「物音に敏感」、「変化が苦手」などの特徴があります。
アスペルガー症候群ではない人は、
『こだわり=趣味、好きな事』
ですが、アスペルガー症候群の人は、この趣味や好きというレベルをはるかに超えた「こだわり」を見せます。
これは、子どもだけなく、大人にも見られる特徴です。
こだわりが突き抜けて、数学者や動物学者になる人など、ポジティブな方向へ向かう場合もあります。
一方で、好きではない事には全くの無関心、無機質になるため、子どもなら宿題をやらなかったり、大人なら頼んだ仕事を期限までにやらなかったりなどのトラブルに繋がってしまう事もあります。
周囲からは、「身勝手なことを言って…」、「わがままだ…」、「だらしがない…」などと思われてしまいますが、本人は理解できない、やりたくないのではなく、できないのです。
これまで、アスペルガー症候群、自閉症、広汎性発達障害など、いろいろな名称で呼ばれていましたが、2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症(ASD;Autism Spectrum Disorder)としてまとめて表現するようになりました。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
不注意・多動性・衝動性が見られる事がある
■不注意
ケアレスミスが多い。いつも探し物をしている。集中力が持続しない。等
■多動性
じっとしていられない。落ち着きがない。手や足をいつもそわそわと動かす。
■衝動性
順番を待てない。せっかち、おしゃべり。等
■過集中
一度集中し始めると止められない。疲労に気づけない。やめたいのにやめられない。等
その他に、「運動が苦手」、「時間の管理が苦手」、「常に強い刺激を求める」、「退屈さに耐えられない」などの特徴があります。
現在のADHDの診断基準は、子どもによく見られる症状が多いですが、ADHDは子どもだけのものではありません。
大人にもADHDの症状が見られ、子どもの時以上に生活に大きな影響が出る場合があります。
例えば、
- 将来のより大きな楽しみのために今の楽しみを我慢する(貯金など)
- いつも楽しいことを探し、単調な日々に耐えられないと感じる
- 大事な記憶がポロポロとこぼれ落ち、自分が言ったことすら忘れる
など、大人としての能力にかかわる事が苦手です。
こうなると、「いい人だけどあてにならない」、「ミスばかりで戦力にならない」、「目新しいものに飛びついて危なっかしい」という評価に繋がってしまう恐れがあります。
LD(学習障害)
読む、書く、計算、推論、運動など、ある特定の分野の習得に非常に時間がかかる。等
■読字障害
字を読んでも理解が出来ない。等
■書字障害
文字を書く事が出来ない。等
■算数障害
計算などが出来ない。等
この他に、「聞くことの障害」、「話すことの障害」、「推論することの障害」などがあります。
文部科学省のLDの定義では、
「LDとは基本的に全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものである(一部省略)」
となっています。
これらの基本的な特性は、単独であらわれることもあれば、いくつかが組み合わさったり、強弱があったりと、人によっていろいろなタイプがあります。
また、基本的な特性の他に、LDに伴いやすい問題として「グループ行動が苦手」、「落ち着きがない」、「その場に適した行動ができない」など、行動面の問題が目につきやすい点も特徴です。
複数の特徴があらわれる場合もある
ここまで、アスペルガー症候群(ASD)、ADHD、LDを分けて説明しましたが、実際には、複数の特性を併せ持っていることも少なくありません。
3つの障害が発達障害のなかでも特に多い障害とされていますが、あくまでも一部に過ぎず他にも多様な症例が見られる場合があります。
発達障害とは、生まれつきの脳の機能の発達に関する障害ですが、上記の分類だけを見ても「この症状が発達障害」であると定義する事は難しく、多くの場合は発達障害と思われる症状が合併して見られる事が多いです。
一部の能力に特化している場合もある
発達障害を持っている人に多く共通しているのは、「能力のアンバランスさの為に、周りから理解されにくい」という点です。
対人関係や注意力などが人よりも苦手な場合でも、何かしらの知識や技術などには人よりも優れていたりなど能力の偏りがある事もあります。
そのような能力の偏りがある事によって、なにか上手くいかない事があったりした場合に、周りの人から性格や生育環境の問題と捉えられ、理解されにくく、人間関係が悪化してしまう事もあるのです。
次回は、アスペルガー症候群(ASD)の特徴についてより詳しく見ていきます。
参考:
e-ヘルスネット,ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について
宮本信,LD 学習症(学習障害)の本,2017/04/17,株式会社主婦の友社