今回は、発達障害のひとつ、ADHD(注意欠陥多動性障害)の人が仕事上・生活上で困る事をまとめていきたいと思います。
前回までの記事⇒発達障害とは?① ~代表的な3つの障害の特徴~はこちら
前回までの記事⇒発達障害とは?③ ~ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴~はこちら
よくADHDの特徴として言われているのは、「落ち着きがない」、「ミスが多い」などです。
しかし、椅子にじっと座っていられず、動き回ってしまうような身体の多動は、大人になるにつれ落ち着いてくると言われています。
目次
ADHDの人が仕事上で困る事
頭の中がいっぱいで集中できない
ADHDの多動は、大人になるにつれて落ち着いていきます。
ですが、頭の中の多動は残っていることも多くあるようです。
- 気が散りやすい
- 計画を立てるのが苦手、計画通り進めるのも苦手
- 頭の中を整理できない
- 複数のことを頼まれると、どれも中途半端になってしまう
など
衝動的に行動してしまう
相手が話している最中であっても、自分の思ったことはすぐに口に出してしまいます。
また、考えが急に変わることもあり、すぐに行動に移してしまうため、さっきまでやっていた作業はそっちのけで、新しい作業に取り組んでしまいます。
「イラッ」とすることがあると、怒りをうまく抑えきれなかったり、何かあるとすぐに落ち込んでしまい、他のことが手につかなくなることもあります。
- 思ったことをすぐに口に出してしまう
- 急に考えが変わってすぐに行動に出てしまう
- 怒りを感じるとうまく抑えられない
- 落ち込みやすい
など
他にも、「自分には合わないから」と仕事を転々としたり、通院先をコロコロ変えたりします。
うっかりミスが多い
ADHDの特徴として、注意が散漫であり、ミスが多い、忘れ物が多いなどがあります。
そのため、仕事では怒られてしまうことも多いようです。
ですが、本人もあとで気付くことがあるため、自分のふがいなさに悩んでしまうこともあります。
- ケアレスミスが多い
- 忘れ物が多い
- 期限を守れない
など
単純作業、長期の仕事は苦手
ADHDの人は、日常の決まりきった業務や日報の提出などのルーティンワークが苦手という人が多くみられます。
単純な入力作業であったり、簡単でつまらない作業はすぐに飽きてしまいます。
「つまらないなー」と思えば思うほど、集中力が途切れてしまい、毎回といっていいほど記入漏れなどが見られます。
また、ADHDの人は、新しいこと、面白そうなことについつい意識がいってしまいます。
そのため、今取り組んでいることでも少しでも「面倒だな」と感じてしまうと、興味が無くなってしまいます。
物事を計画的に進めるのが苦手なため、「面白そう」なものだけに意識がいってしまいます。
優先順位が付けられないため、「面白そう」と感じられなければ、早目に仕上げなければならないものや、コツコツ進めていかなければならないものでも後回しになってしまいます。
ADHDの人は、仕事において、どんどん新しいアイディアが浮かんできて、まわりからも「すごい!」と評価をされるアイデアマンでもあります。
一方で、せっかくいい企画を考えても、しっかりとした準備や計画が立てられず、また本人が投げ出してしまうことで周りが引き継がなくてはならなくなり、「あいつはあてにならない」と評価が下がってしまうこともあります。
スケジュール管理が苦手
ADHDの人は、ひとつのことに集中できず、いろいろなことに気が散りやすいので、予定とは関係なしに目の前の自分のやりたいことに走ってしまうことがあります。
また、時間を感覚的に捉えるのが苦手なため、締め切りの日にちはわかっていても、それに対して、あとどれくらいの時間が残っているのかを実感しにくいという特性があります。
時間を守れない、遅刻してしまう
ADHDの人は、気が散りやすくありますが、一度集中してしまうとなかなかやめることができません(過集中)。
約束の時間までもうすぐとわかっているし、急がないといけないということも分かっているのに今やっていることをやめることができません。
また、ADHDの人にとっては、基本的に新しいこと=優先するべきことになっているため、新しい情報が入ってくると、それが優先になってしまい、もともと予定していたことの優先順位はどんどん低くなってしまいます。
衝動的に動いているときには周りの人からの注意なども耳に入らないことが多いようです。
そのため、約束の時間に遅れてしまうということも少なくありません。
ADHDの人が日常生活で困る事
毎日の家事がうまく出来ない
ADHDの人は、物事を継続させることが苦手なため、毎日家事をするという事自体が大変なことなのです。
「やらなくてはいけないことなのに、それができない」
「みんなが当たり前にやっていることができない」
などと、自己嫌悪に陥ってしまい、うつ病を引き起こしてしまうこともあります。
また、ADHDの人は、物事を「好き」か「嫌い」で考えてしまうため、自分の「好き」なことは優先して、「嫌い」なことは後回しになってしまいがちになります。
片づけがうまく出来ない
ADHDの人は、片づけが苦手です。
整理整頓から食事の後片付けまで、一連の片づけ作業など、どこから手を付けていいのか分からなくなってしまいます。
部屋が散かっていることで、必要なものが見つからなかったり、散かっているのは分かってはいるのに、それができない自分に「なんて自分はダメなんだ…」と思ってしまいます。
片付けができないことで家族関係が悪化し、ストレスが溜まって精神的に疲れてしまうことも。
金銭管理がうまく出来ない
ADHDの人は、衝動的な行動にでる傾向があります。
そのため、買い物に出かけると衝動的にたくさん買ってしまうこともあります。
本当に必要なものは後回しになり、目の前のほしいものを買ってしまいます。
計画的にお金を使うことも苦手なので、クレジットカードの請求が追いつかず、自己破産してしまうこともあります。
貯金も苦手で、先のことを考えてお金を貯めておくということができません。
結論を急ぎ失敗してしまう
ADHDの人は、家や車を買う、仕事を辞める、離婚する…など、重大な決断を衝動的に行う傾向があります。
感情に左右されやすく、物事を保留した状態にしておくことが苦手なため、すぐ白黒つけたくなってしまいます。
このように、大人になって身体の多動は落ち着いても、頭の中の多動や、うっかりミスの多さに仕事で困っている人も多くいます。
また、「出来て当たり前」と思われがちな普段の家事ですが、ADHDの人にとっては簡単なことではありません。
大人になってからADHDだと診断されたケースも少なくないようです。
参考:
司馬理英子,ササっとわかる「大人のADHD」基礎知識と対処法,講談社,2011/10/26