今回は、ADHD(注意欠陥多動性障害)の人が、仕事上・生活上で困っていることのへ対処法を詳しく見ていきます。
前回までの記事⇒発達障害とは?① ~代表的な3つの障害の特徴~はこちら
前回までの記事⇒発達障害とは?③ ~ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴~はこちら
前回までの記事⇒発達達害とは?⑥ ~ADHDの人が困る事~はこちら
目次
仕事上で困る事への対処
ADHDの人の特徴のひとつである多動は、大人になると落ち着いてくると言われていますが、頭の中の多動は残っていることも多いようです。
仕事に集中できない人
ADHDの人は、好きなことには何時間でも集中することができますが、興味のないことにはまったく集中できないという特性があります。
興味のあることなら集中できる、興味のないことは集中できない。
そんなの誰でもあると思うかもしれませんが、ADHDの人の場合はそれがとても極端にでてしまいます。
そこで、ひとつのことに集中できないなら、複数の作業をすぐに始められるように準備しておくといいでしょう。
ADHDの人は並行して作業を行なうのが苦手な傾向にあります。
ですが、飽きたら違う作業に移るという方法を取れば、ひとつのことはあまり進まなくても、全体的には自分が抱えている作業を進めることができます。
また、Aの作業を行なっているときに、急にBの作業のいい考えが浮かぶかもしれません。
そんなときに、すぐにBの作業にも取り組めるように、Bの作業の資料やファイルも予め用意しておくといいでしょう。
複数の作業を受け持っている場合は、“飽きたら次”のように並行して作業を行なうことができますが、ひとつの仕事に集中して取り組まなくてはならないときもあるはずです。
そんなときは、ある程度仕事に区切りをつけて休憩をとり、メリハリをつけることが大切です。
その休憩の取り方も少し気を付けてみましょう。
「ここまでやったら休憩」というように、仕事の進捗で区切りをつけるようにすると、より有効的に時間を使えそうです。
大体1時間くらいで終わる量で、「ここまでやったら休憩」と決めましょう。
うっかりミスが多い人
ADHDの人は、ワーキングメモリー(記憶のお盆)が小さいことを忘れがちで、その結果、ミスが多くなりがちです。
このミスを防ぐには、まず毎日の業務をルーティン化すること。
決めたやり方で決めた時間にすることを繰り返しながら、習慣にしていきます。
また、より万全にするために、チェックリストで漏れがないか確認します。
メモや手帳、携帯電話のアラームやカレンダー機能などをうまく活用しましょう。
長期の仕事が苦手な人
ADHDの人は、物事を先延ばしにしてしまう傾向があり、より長期的で、大がかりなものほどその傾向が出やすくなります。
先延ばしを癖づけないために、追い詰められたほうがパワーを発揮できるなら、自分で早目の締め切りを設定し、周りに公言してしまいましょう。
また、その新たな締め切りに間に合わせるためにも、小さなゴールをいくつか設定していきましょう。
- 今すぐにやるべきことを1つ決める
- 今すぐやるべきことの締め切りを設定する
- 周りに公言する
上司や顧客に連絡を取り、「〇月〇日のご都合のいい日時に、お時間いただけますでしょうか?」などと、約束をしてしまえば先延ばしも回避できます。
スケジュール管理が苦手な人
ADHDの人は、ひとつのことに集中できず、気が散りやすくあります。
予定とは関係なしに目の前の自分のやりたいことに走ってしまうため、スケジュールに興味をひいておく必要があります。
ただし、いろいろなことに気が散りやすいので、いろいろな紙に書いたりしておくと管理できなくなってしまいます。
なので、全てのことを一つの手帳で管理できるようにしたほうがよさそうです。
また、ADHDの人は、時間を感覚的に捉えるのが苦手でもあります。
締め切りの日にちはわかっていても、それに対して、あとどれくらいの時間が残っているのかを実感しにくいという特性があるためです。
そのため、ADHDの人の場合は、自分のスケジュールを視覚的に捉えられるように、1ヶ月分の予定を見開きで、大きく見られるようなもので予定を管理するといいかもしれません。
時間を守れない、遅刻してしまう人
ADHDの人は、「新しいこと=優先するべきこと」になってしまうため、もともと予定していたことの優先順位はどんどん低くなってしまいます。
出発前に他のことが気になってしまい、衝動的に行動しがちな人は、家を出なくてはならない時刻を計算し、それよりも30分早く家を出るようにしましょう。
いつもより30分余裕を持っていれば、何か衝動的に行動しても大丈夫なはずです。
自分の傾向を把握して、もし30分では足りない場合は、1時間早めるなど自分に合わせて設定していきましょう。
出発前に特に気になるようなこともなく、順調に家を出れるようなら早すぎる到着になってしまいますが、遅れるよりはマシです。
時間の管理がうまく出来るようになってきたら、少しずつ余裕を持っていた時間を短縮させていきましょう。
日常生活で困る事への対処
毎日の家事がうまく出来ない人
物事を継続させることが苦手なADHDの人は、物理的に集中力を妨げる物を遠ざけ、気が散る環境を遠ざけます。
邪魔な音や物、テレビなどを消し、楽しいことに気を取られて集中できない場合は、それらを遠ざけておきます。
誘惑が多い時は、「〇〇まで家事をしたら、〇〇をしよう」とタイマーをかけ、時間を区切って集中し、家事が片付いたら「買い物をしよう」など自分にご褒美をあげるのも効果的です。
片づけがうまくできない人
まずは、自分にとって重要な物とそうでない物を分類しましょう。
そして、それぞれの物の収納場所を固定して、ラベルを貼って物の住所を明確にしておきます。
預金通帳や健康保険証、印鑑、年金手帳など重要な物は、あちこち散らばらないようにファイルし、必要な時にすぐ取り出せるシステムにします。
何をどこにしまったかのリストを作れば、忘れっぽいADHDの人にも役に立ちます。
金銭管理がうまく出来ない・結論を急いでしまう人
衝動的な行動に出る傾向があるADHDの人は、買いたい物をつい衝動買いしがち。
何か買い物(特に大きな買い物)をする時には、メリット・デメリットを冷静に考えるようにしましょう。
また、頭で考えるだけでなく、表に書きだすことによって客観的に判断することができます。
これらは、会社を辞める、離婚するなど、大きな決断をする時にも役に立ちます。
ADHDの人は「しっかり念じて」や「決意して」がなかなかうまくいきません。
そのような内的動機付けでは、やる気の継続が難しく、信念を忘れ、決意を無視し、簡単な方に流されてしまいます。
これを防ぐには、「この目標を達成したら、何かごほうびがもらえる」という【ご褒美制】が威力を発揮します。
〇〇が終わったら3ポイント。▲▲の片づけが終わったら5ポイント、など苦手なことにごほうびポイントをつけ、200ポイントになったら、何かごほうび、という形にしてみましょう。
参考:
司馬理英子,ササっとわかる「大人のADHD」基礎知識と対処法,講談社,2011/10/26