会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第4回は、「発達障害の原因と、『障害』という言葉が招く誤解」の続き、「発達障害を大人になってから気づくわけと、能力の発揮」を解説していきます。
発達障害を大人になってから気づくわけ
幼少期から学生のうちは、一人で好きなことに没頭していても許容されますし、うまくいかないことがあっても、家庭や学校のサポートがあります。
しかし、社会人となって就職したり、結婚して家庭を取り仕切らなければならないようになると、そうはいきません。
多くの場合、仕事はたくさんの人と関わって成り立つものですし、仕事を持たない女性の場合も、妻、母親、嫁という立場で、さまざまなコミュニケーションや接点を持つようになります。
子どもや学生時代と違って、高度かつ複雑なコミュニケーションを駆使しながら、人間関係を築いていく必要が生じてきます。
仕事上では、相手の表情やしぐさ、言葉づかい、声の調子から胸の内を推量して交渉したり、意に沿わなくてもやらなければならないこと、苦手な上司や取引先などとも付き合っていかなければなりません。
よって、感情のコントロールを必要とされる場面も多くなります。
社会性、コミュニケーション能力に問題を抱える発達障害の人は、実績をあげることはできても、人間関係に支障をきたすことも多いため、周囲の人からの評価を得にくくなり、仕事をうまく運べないことが多々あります。
「ミスが多い」「時間が守れない」「物事の優先順位がわからない」「片づけられない」などが続く、もしくは重複し、「生きづらさ」を感じた時に、自分が発達障害であることに気づくわけです。
発達障害は何歳からでも「調整」可能で、その能力を発揮できる
発達障害の特性に合わせて、行動や言動のコツを会得すると、それほど苦労せずに生活することが可能です。
家族や周囲の人の理解やサポートに恵まれることも大きな要素になりますが、「うまくいかないのは性格ではなく障害のせい」と、自覚することでトラブルを回避することができるようになります。
ADHD、ASD、ASの脳の発達はアンバランスなため、「あれはできるのに、これができないはずがない」=「できないのは本人が怠けているせいだ」と、周囲から思われてしまうことが少なくありません。
しかし、普通の人が当たり前にできることができなくても、特定の分野や領域では、優れた才能を発揮することがあり、中には一流の芸術家、科学者などになる人もいるのです。
例えば…、
坂本龍馬は、幼少期は袴を自分ではけず、いつも食べものをこぼしながら食事して、10歳を過ぎてもおもらしをする、典型的なADHDだったと言われています。
学校でもいじめられっ子の龍馬に、姉の坂本乙女は「弟は必ず立派な人間になる」と愛情たっぷりに接して、いち早くその才能を見抜いていました。
相対性理論などの学説を打ち立てたアインシュタインは、5歳を過ぎてもうまく言葉を話せず、すぐにキレる子どもだったと伝えられています。
部屋の片づけができずに職を転々とし、人付き合いも苦手だったと言われていて、発達障害のさまざまな症状を抱えていたのでは、思われています。
このほかに、ベートーベン、モーツアルト、レオナルドダヴィンチ、エジソン、織田信長などに、発達障害の症状に近似したエピソードが残っています。
「できない」ことに目を向けるのではなく、「できること」「得意なこと」に目を向けて、その人の能力を伸ばすよう、周囲もサポートしていくべきなのです。
大人の発達障害は、適切なカウンセリングや薬物療法を受ければ、治療は十分に可能だということを、障害者本人はもちろん、周囲の人も知っておく必要があります。
ただ、家族をはじめ、上司、同僚、部下として発達障害者たちと日々接していくことは、心理面に得に大きな負担がかかるのも事実です。
障害者自身だけでなく、周囲の人たちも心身のバランスを崩さないよう、一人で抱えこまず、必要に応じてカウンセラーなどの専門医にかかるなど、気をつけることが大切です。
次回、「大人の発達障害の種類と特性【ADHD】」へ続く