会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第5回は、「発達障害を大人になってから気づくわけと、能力の発揮」の続き、「大人の発達障害の種類と特性【ADHD】」を解説していきます。
目次
大人の発達障害の種類と特性【ADHD】
大人の発達障害で問題になるのは、主に「ADHD」と、ASDの中の「アスペルガー症候群」です。
知能や学力が高くても、社会生活に支障をきたしたり、集団生活に適応できない場合があるためです。
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
ADHDを理解する上で、最も重要な特徴は、
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
の3つです。
不注意、多動性などは、行動の問題が強調されているため伝わりやすいですが、実際は行動面だけでなく、社会性、認知機能、運動能力など様々な能力に発達のアンバランスさがあり、社会生活を送る上で問題になっています。
一般的に、子どもは発達に伴いどの能力もほぼ同じように成長しますが、発達障害の子どもは脳の発達に偏りが生じるため、それが大人になっても継続します。
【不注意】気が散りやすく集中できない
「不注意」は、ADHDの中核的な症状です。
脳に軽度の機能障害が生じることにより、目が覚めている時でも覚醒レベルがやや低下し、注意散漫になると考えられています。
また、興味の対象が変わりやすく、ひとつのことに長時間集中できないため、すぐに気が散ってしまいます。
ADHDの特性は、子どもから大人に成長する過程で軽くなるものもありますが、不注意はあまり変わらないと言われています。
この特性のため、「管理すること」が不得意です。
「時間の管理」が苦手なため、仕事を計画的に進められない。
「物の管理」が苦手なため、片付けができず、忘れ物や失くし物が多かったりします。
書類、金銭、健康、嗜癖などの自己管理(セルフコントロール)も苦手です。
ワーキングメモリーが少ない場合も多く、同時に複数の作業をこなすことにも困難です。
具体的に、次のような特徴があります。
- 人の話を最後まで聞けず、自分の言いたい事だけを一方的に話す。
- 会議や打ち合わせの最中にぼーっとしたり、居眠りする。
- やるべき仕事や課題を計画的に進められず、最後までやり遂げられない。
- 掃除が苦手で整理整頓や片付けができない。
- うっかりミスは忘れ物が多い。
- 遅刻が多い。
- 信号の見落としなどで事故を起こしたり、ケガをしやすい。
【多動性】落ち着きがなく、そわそわしている
子どもの頃の「多動」は、じっとしていられず授業中にウロウロ歩き回ったり、キレて大声でわめいたりする症状があります。
しかし、多くの場合、歩き回るなどの全身の多動は、小学校高学年から思春期にかけて徐々に改善されます。
その一方で、大人になると、せっかちでじっとしていられない、気ぜわしくソワソワしている、落ちつきがないという様子が見られるようになります。
具体的に、次のような特徴があります。
- 長時間じっとしているとイライラする。
- 座っていても、頻繁に姿勢を変えたり脚を組み替える。
- 用もないのにウロウロする。
- 絶え間なく早口で一方的に話す。
- 貧乏ゆすりをしたり、机やテーブルをトントンと叩く。
- 仕事が長続きしない。
【衝動性】後先考えず、思いつきで行動する
「衝動性」は、ADHDの人に見られる代表的な特性です。
何か思いついたら、よく検討もせずに行動し、失敗やトラブルを繰り返します。
子どもの頃は、おもちゃをいきなり投げつけたり、人を突飛ばしたりします。
脳内の神経伝達物質のドーパミン、ノルアドレナリンの不足がこうした行動の原因と考えられています。
具体的に、次のような特徴があります。
- TPOをわきまえた振る舞いができない。
- 些細なことで怒りやすく、キレることが多い。
- 突発的なミスを繰り返す。
- たびたび交通事故を起こす。
- 思いついたことをそのまま発言したり行動に移す。
- ギャンブルにのめり込んだり、衝動買いをする。
- 不用意な性行動をしてしまい、異性間のトラブルが多い。
- アルコール、たばこ、カフェインなどの嗜癖に走りやすい。
- 家庭内暴力、児童虐待に至ることがある。
- 無遠慮な発言、唐突な行動のため、夫婦間、家族間でのトラブルが多い。
ADHDの3つのタイプ
ADHDは、上記の3つの症状の現れ方によって、次の3つのタイプに分かれます。
- 不注意優勢型
不注意傾向が強い、ぼんやりうっかり型 - 多動・衝動性優勢型
落ちつきのないエキセントリック(性格・行動が個性的)型 - 混合型
これらが複雑に絡み合い、重なり合って、様々な症状として現れます。
社会人として、職場や仕事で特に問題になるのが、
- 計画性がなく管理が苦手。仕事を先延ばしにする傾向
- 感情のセルフコントロールができない
- 対人スキル・社会性の未熟
になります。
ADHDの人は、仕事で失敗やミスを繰り返すため、成功体験や達成感を得られないことが多く、自信を喪失してセルフイメージも低くなり、劣等感、疎外感を抱きやすいため、自分の存在価値を見出しにくくなります。
そのため、うつ病や不安障害、さまざまな依存症などを併発してしまいます。
なかなか回復しないうつ病や不安障害、依存症の背景に、発達障害が隠れている場合も多くみられます。
次回、「大人の発達障害の種類と特性【アスペルガー症候群】」へ続く