会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第11回は、「職場でみられる発達障害…『忘れやすい。忘れ物が多い』」の続き、「職場でみられる発達障害…『空気が読めない。思い立つとすぐ行動せずにいられない』を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例4】…「空気が読めない。思い立つと行動せずにいられない」(Sさん・40代男性)
Sさんは、有名国立大学の法学部を卒業後、大手証券会社に入社し、現在は投資銀行の役員です。
Sさんは毎朝(深夜?)3時に起床し、アメリカ市場のチェックから一日で始まります。
その時、何か思いつくと、4時、5時であろうと部下や関係者へ電話で指示を飛ばします。
叩き起こされた部下が電話口で迷惑そうにしていても、「早い時間に悪いな」の一言もなく、熱く一方的にまくしたてる、良く言えば熱血漢、悪く言えば非常識な猛烈ビジネスマンです。
Sさん自身、意地の悪さや他人の足を引っ張るなど、陰湿なところは全くなく、純粋な情熱で働き続けるため、上司からは可愛がられて異例の出世をとげました。
しかし、Sさんのような体力・能力のない部下にとっては、かなりやっかいな上司です。
「資料作ってくれ。14時の会議に間に合えばいいから」と、部下に依頼したのは会議の30分前。
長時間の会議が何本も続いて、さすがに疲労した部下が「少し休憩させて欲しい」と頼むと、「少しって何分?俺の中では1分だけど」と、1分後には会議再開。
そんな熱血ぶりをパワハラだと感じる部下もいます。
また、他人のパソコンやスマートフォンを断りもなく使ったり、デスクの引き出しを開けて勝手に文具を使うなど、傍若無人な態度もあり、悪気はないとは言え、振り回される部下たちは青色吐息で疲弊しています…。
考えられる症状
思いついたらすぐ行動するのは、衝動性・多動傾向のあるADHDにみられる傾向です。
その行動力が職場で効果を発揮することもありますが、本人だけがハイテンションで、相手の状況に配慮せず、一方的にまくしたてたり、自分中心になりがちのため、周囲の人を疲弊させてしまいます。
他人の物を勝手に使うのは、社会常識がなかなか身につかず、決まり事を理解するのが苦手なADHDの人にみられます。
周囲の対応策
このタイプの人が上司の場合、部下からは注意しにくいものです。
電話の時間に配慮して欲しい、上司といえど部下の引き出しを勝手に開けるのはやめる、など、さらに上の立場の人間から注意してもらうか、一人ではなく部下複数名で相談する、といった形で本人に申し出てみてください。
次回、「職場でみられる発達障害…『人が傷つくことを平然と悪気なく口にする』」、へ続く