会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第16回は、「職場でみられる発達障害…『曖昧な言い回しがわからない。自分の思い込みに固執する』」の続き、「職場でみられる発達障害…『本音と建前が理解できない。冗談が通じない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例9】…「本音と建前が理解できない。冗談が通じない」(Mさん・30代男性)
Mさんは、技術系専門学校を卒業後、たびたび仕事を替えて、現在は自動車メーカーの技術職として勤務している35歳の男性です。
Mさんは、いわゆる「本音と建前」の違いがよく分かりません。
遅刻を繰り返すMさんに、上司から「連日重役出勤とは、君は大物だね」と嫌味を言われますが「そうですか!ありがとうございます!」と、言葉通り受け取ってしまい、「反省していない」と、さらに印象を悪くしてしまいます。
また、上司から「倉庫に行くなら、ついでに〇〇があったら持ってきてくれ」と言われたMさんは、就業時間になっても工場に帰ってこなかったため、上司から「いつまで探しているんだ!」と呆れたように叱責を受けたのですが、戻る時間を指示されたわけでもなく、〇〇を探し続けているだけで、言われた通りにやっているのになぜ怒られるのかわかりません。
またある時は、いきなり同僚の家を訪ねて、「突然どうしたの?」と、怪訝な顔をされてしまいます。
Mさんは、「君から来た転居のハガキに“お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください”と書いてあったから」と、言葉通り近くにきたので訪ねました。
周囲はそんなMさんを「社交辞令もわからない」「話がかみ合わない」「何でも本気にされるから怖い」と揶揄したり敬遠しています。
Mさん本人も「いつも最初はいいんですが、時間が経つと人から嫌われてしまうんです」と、自信をなくしています…。
考えられる症状
事例8と同様、直接は言葉に出さない意味を汲み取ったり、ニュアンスや比喩などが理解できないのはASDにみられる症状です。
周囲が笑う冗談や、皮肉の言葉も受け止められない場合があります。
周囲の対応策
「あれ」「これ」「それ」などの指示代名詞や、「今度」「早め」「なるべく」などの状況に応じて本人に判断が委ねられる指示は、混乱させることがあるため、具体的な指示を出すようにしましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『自分の仕事以外は関われない。指示されたこと以外ができない』」、へ続く