会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第17回は、「職場でみられる発達障害…『曖昧な言い回しがわからない。自分の思い込みに固執する』」の続き、「職場でみられる発達障害…『自分の仕事以外は関われない。指示されたこと以外ができない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例10】…「自分の仕事以外は関われない。指示されたこと以外ができない」(Sさん・30代男性)
Sさんは30代半ばの経理職の男性です。
大学を卒業後、金融関係の会社に就職すると、与えられた仕事を真面目に黙々とこなし、毎日きっちり9時に出社、5時半には帰るという規則正しい生活を送っています。
繁忙期や決算期は残業になることもたびたびあり、部内総出で対応しますが、Sさんだけは5時半になると、ピタッと仕事をやめて帰ってしまいます。
チームで作業する時も、Sさんは自分の分が済むと、どれだけ未整理の伝票が残っていても、一切手伝おうとしません。
他の人がどんなに忙しそうにしていても関心がないのです。
上司から「他の者が困ってる時は、手が空いている人間が手伝うのは当たり前だろう。暗黙の了解というものだろう」と言われても、「はぁ…そういうものですか」と、暗黙の了解の意味がイマイチわかりません。
当然、年末の大掃除は自分の机の掃除だけしかやりません。
また、取引先の接待でカラオケに行った時も、注文もとらずにただぼーっとしているだけです。
そんな彼の行動は「気が利かない」「思いやりがない」「協調性がない」と、周囲に関係性を悪化させる原因になっています…。
考えられる症状
ASDの特性のひとつに「強いこだわり」があります。
一旦決めた自分のルールはパターン、習慣や手順などにこだわり、変更を嫌がり融通がききません。
本人としては、しっかり規則やルールを守っていると思っているため、なぜ注意されるのかがわかりません。
また、人の気持ちを想像することが苦手なため、「気を遣う」ことに思い至らない場合も多くみられます。
周囲の対応策
「普通は~するはず」「常識では~せず」などと伝えるのではなく、あらかじめ「来週は決算期に入るから、残業は〇時までやって欲しい」など、具体的に伝えましょう。
また、突然の変更は、こちらが思う以上に不意打ちに感じ、対応できずにパニックを起こすこともあるため、事前に伝えるのがコツです。
次回、「職場でみられる発達障害…『文章を書くのが苦手。スケジュール管理ができない』」、へ続く