会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第18回は、「職場でみられる発達障害…『自分の仕事以外は関われない。指示されたこと以外ができない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『文章を書くのが苦手。興味の偏りが激しい。スケジュール管理ができない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例11】…「文章を書くのが苦手。スケジュール管理ができない」(Oさん・30代男性)
私立大学を卒業後、健康医療機器販売の会社に入社したOさんは、明るい性格で社交性もあり、友人も多い30代の男性です。
Oさんはアイデアが豊富で、企画会議ではオリジナリティのある企画を次々と提案するため、上司や同僚からも一目置かれていますが、企画書として文書にまとめるように指示されると、途端に仕事が進まなくなってしまいます。
「何をどう書いていいのかわからないし、考えが文章にまとまらない」のです。
頭の中では、伝えたいことの起承転結が構成されているのですが、文章にすると途端に書けなくなってしまいます。
気力が途切れたOさんは、別のこと興味が移ってしまい、インターネットでゲームなどを始めてしまいます。
こんなOさんの態度は、周囲から急にやる気をなくしたように見え、「責任感も忍耐力もない」と、頻繁に激しい注意を受けるようになりました。
Oさんは学生時代から板書(黒板の文字や図を書き写すこと)ができず、いまだに会議でもノートが取れず、電話の伝言などのメモも苦手。
しかし、仕事好きでやる気は人一倍あるため、新しいプロジェクトが立ち上がると、「できます、やります」と、率先して手を挙げるものの、計画を立てずにアイデアを実行に移そうとするため、他の人と足並みを揃えて仕事に取り組むことができません。
結局、多くのタスクを一人で抱え込むことになり、睡眠不足で遅刻が増え、約束の時間に来られないことが続いています。
- 締め切りの納期が守れない。
- ダブルブッキングが多い。
- やりかけの仕事があっても、すぐに他に気をとられて、どれも完成しない。
結果、業務が破綻してしまいます。
Oさんの尻ぬぐいをさせられる同僚たちからは、「彼とは組みたくない。関わりたくない」という不満があがり、Oさんは職場の友人の数も減ってきてしまったと嘆いています…。
考えられる症状
ADHDの人には、アイデアが豊富でフットワークがいいのに、最後までやり遂げられないという場合があります。
上司や同僚に相談せず、よく検討もしないで先走ってしまうため、根気が必要とされる準備や交渉、細かい業務が苦手で途中で仕事を放り出してしまいます。
そのため、他の人が後始末をさせれることも多く、評価が上がることはありません。
また、企画書以前に、板書やメモを取ることも難しいため、聴覚認知に困難を抱える学習障害を併発していると思われます。
周囲の対応策
アイデアが豊富という長所を買い、起案後は期限を細かく切って、計画、進行、検討に上司が介入していくようにしましょう。
フォローばかりに回る周囲の同僚や部下に負担がかかって疲弊しないように、気配りすることも大切で、チームワークあってこそのプロジェクトであることを、ADHDの人自身にも伝え続けるようにしましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『仕事が遅く納期に間に合わない。忘れっぽい』」、へ続く