会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第20回は、「職場でみられる発達障害…『仕事が遅く納期に間に合わない。忘れっぽい』」の続き、「職場でみられる発達障害…『細かいことにこだわる。全体が見えない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例13】…「細かいことにこだわる。全体が見えない」(Tさん・20代女性)
幼少の頃から「変わった子」と言われていたTさんは、美術系の専門学校を卒業後、服飾系の通販会社へ就職しました。
デザインや企画部を希望していましたが、配属されたのは広報でした。
対人スキルが学生の頃から元々低く、打ち合わせや会議などが苦手なTさん。
上司に認められたい、出世したいという欲がなく、職場の同僚たちとも仲良くしたいと思うこともないため、人間関係が希薄で、「いるのかいないのか分からない幽霊社員」と揶揄されたりしていますが、Tさん本人は「一人でいる方が楽なので問題ないです」と、気にしていない様子です。
そんなTさんが、広報用のパンフレットを作成するにあたり、リーフレットのデザインの一部を任されることになりました。
デザインやイラストが得意なTさんは、この作業にすっかりはまり込んで、めったにやらない残業を続け、仕事が終わらないと言えに持ち帰り、徹夜でリーフレットの作成に取り組みました。
締め切り日に提出するように促されても、この線のニュアンスが少し違う、発色が気に入らない、小見出しだけフォントを変えたほうがいいかも…と、他の人が見ても分からないような細部にこだわります。
上司から「これで十分」と言われても頑として受け付けず、納得するまで何度もやり直して、結局、締め切りに間に合わせることができませんでした。
上司から「仕事は趣味ではない」と、一喝されましたが、Tさんは「ああ、そうですか」と、響くこともありません。
デザインのクオリティは高いため、その後も同じような仕事が何度か回ってきましたが、その度に夢中になって取り組むため、業務中は休憩も取らず、毎日の睡眠時間は3~4時間、食事も全てカップラーメンや菓子パン、休日返上で働き続けてしまいます。
そんなことを繰り返しで、ついにTさんは体調を崩してしまい、現在休職中です…。
考えられる症状
好きなことなら睡眠や食事もとらずに集中してしまうのは、ASDにみられる症状です。
独自のこだわりがとても強く、自分の限界を把握できていません。
一旦、自分の世界に入ると現実に戻れないこともあります。
一方、人とうまくコミュニケーションがとれないため、ひとりでいる方が楽だと感じる場合が多くみられます。
周囲の対応策
独自のこだわりも、場合によっては仕事に活かせる場合があります。
無理のない適切なスケジュールで、安心して仕事に取り組めるように、得意なこと、苦手なことを周囲の人が理解しておく必要があります。
また、過度に集中して寝食を忘れて健康を害することがないよう、上司は配慮しましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『思い通りにならないと、カッとなって暴言を吐く』」、へ続く