会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第34回は、「発達障害の『純粋なエネルギー』」を活かす」の続き、「発達障害に似た症状と発達障害の治療法①」を解説していきます。
目次
発達障害に似た症状と発達障害の治療法①
発達障害は、思春期や青年期以降に、さまざまな合併症が起こりやすいことが知られています。
また、発達障害と似たような症状に見えても、アスペルガー症候群やADHD以外の精神疾患だったり、併発していたりするなど、専門家でも見分けがつきにくい場合があります。
特に、うつ病を併発している場合が最も多く、不安障害、パーソナリティ障害、依存症、嗜癖行動などの合併をあらわす人もいて、合併数が多ければ多いほど治療は複雑化します。
代表的な合併症として、次のようなものがあります。
うつ病(気分障害)
発達障害の人は、、ストレス耐性が低く、うつ病を併発することがあります。
子どもの頃から何をやってもうまくいかなかったなど、成功体験より挫折体験が多く、自己肯定感や自尊感情が低いことがその理由となっています。
不安障害(神経症)
空気を読まず、はっきりと発言するADHDの人は、一見図太いよう見えますが、実際は心配性で不安や葛藤を抱えていて、不安障害を併発することがあります。
よくみられる症状としては、強迫性障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷性ストレス症候群(PTSD)、全般性不安障害などがあります。
強迫性障害
繰り返し起こる不安なイメージ(強迫観念)と、それを打ち消すための様々な行為(強迫行為)が、主な症状です。
例えば、
- 手がばい菌に汚染されていると思い、繰り返し手を洗う。
- 外出時、鍵をかけたか、ガスの元栓を閉めたかなどか気になり、何度も戻って確認する。
- 毎日決まったパターンで行動しないと不安になる。
などがあります。
本人も不合理な行為であることは自覚してますが、それを放置できず繰り返してしまうのが特徴です。
社会性不安障害(対人恐怖症)
不安や恐怖を感じる状況になると、心身に様々な症状があらわれる精神疾患。
例えば、会議の発言などで多くの人の前で話すと、大量の汗をかいたり、動悸、手足の震えなど症状があらわれます。
パニック障害
突然のめまい、心悸亢進(普段は自覚しない心臓の鼓動を感じる)、呼吸困難などの発作が起こり、死の不安に襲われる精神疾患。
他に、心臓がどきどきする、身体や手足が震える、呼吸が速くなる、息苦しくなる、吐き気がする、汗をかく、などの発作があらわれます。
特別な原因がなくても、突然、急に発症するのが特徴です。
一度発症すると、「まだ発作が起こるのではないか」という再発への不安を抱くようになります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷(トラウマ)体験が元になり、さまざまな身体的、精神的なストレス障害を引き起こす精神疾患。
原因となる体験には、戦争、災害、事故、虐待、家庭内暴力、暴行などがあり、また直接の被害者ではなくても、目撃したことがトラウマになる場合もあります。
身体的、精神的症状として、
- 何度も思い出す、繰り返し夢にみるフラッシュバック(再体験症状)
- 想起させるものを避けたり、経験そのものを思い出せなくなる(回避症状)
- 不眠、強い不安や焦燥感、極度の警戒心を見せたりする(過覚醒症状・精神的な過敏症)
などがあります。
ADHDの人は、一般の人よりもPTSDを合併しやすいと言われています。
全般性不安障害(不安神経症)
特に悩みや不安がなくても、慢性的(診断では6か月以上)に漠然とした不安がつきまとい、身体的、精神的な症状があらわれる精神疾患。
症状として、身体的には、筋肉の緊張、肩や首の凝り、下痢、頻尿、頭痛、動悸、めまい、不眠などがあります。
精神的には、不安、緊張、落ちつきのなさ、苛立ち、集中力や記憶力の低下などがみられます。
ADHDの人は、不注意傾向や衝動性などのため、言動をコントロールできず、いつも漠然とした不安を抱えるために合併しやすいと考えられています。
次回、「発達障害に似た症状と発達障害の治療法②」、へ続く