会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第35回は、「発達障害に似た症状と発達障害の治療法①」の続き、「発達障害に似た症状と発達障害の治療法② パーソナリティ障害、依存症、統合失調症ほか」を解説していきます。
目次
発達障害に似た症状と発達障害の治療法②
パーソナリティ障害
著しく偏った思考、行動パターンのために、社会生活に支障が出る精神疾患です。
パーソナリティとは、その人の行動パターンや性格全般を指しますが、ここに障害があり、攻撃的になったり自虐的になったりします。
境界性パーソナリティ障害
自己は他者イメージが不安定で、感情や思考のコントロールが困難になります。
行動、気分、対人関係の面で、短期間に態度が豹変します。
嫌われたり見捨てられることを極端に恐れ、また周囲の人を理想化したり、反対に激しく怒りをぶつけたりします。
自己像が不安定なため、常に空虚感や無力化を抱いている場合もあります。
アルコール、セックス、薬物に依存したり、過食、無謀な運転など、自分を傷つけるような行為、自傷行為、自殺行為を繰り返したりします。
ADHDと共通するのは、依存症や嗜癖行動を高い確率で併発する場合があることです。
双方の共通点は、強い衝動性ですが、ADHDの場合は、覚醒レベルを高めたり、不安を和らげるための行為であるのに対し、境界性パーソナリティ障害の場合は、怒りや攻撃性、空虚感を解消するためである点が異なります。
反社会性パーソナリティ障害
自分の欲求を満たすためなら、他人に迷惑をかけることも平気で、他人をだましたり、傷つけたりします。
それに対し、自責の念を感じることもなく、常に自分を正当化して犯罪行為を繰り返すこともあります。
自己愛性パーソナリティ障害
「自分は特別な人間である」と思い込み、周囲の人から自分は特別扱いされるべき、という特権意識を持っているため、尊大で傲慢な態度や行動をとります。
他人の気持ちを理解するという共感性に欠けていて、自分の成功や目的のためなら他人を平気で利用することもあります。
また、他人が成功や名誉を手に入れると激しく嫉妬したりします。
依存症・嗜癖行動
ADHDの人は、自己肯定感や自尊心、ストレス耐性が低く感情が不安定なため、それらを解消しようと逃避したり、後先考えずに今その瞬間だけ充実させようと、依存や嗜癖行動を合併しやすいと臨床的に知られています。
アルコール、薬物など薬物依存、ギャンブル、セックス、買い物、脱毛などの行為依存、恋愛、夫婦間暴力などの人間関係依存などがあります。
双極性障害(躁うつ病)
うつ状態と躁状態が周期的にあらわれる症状。
躁状態の時は、以下のような症状があらわれます。
- 不注意、落ちつきのなさ、気分の不安定さ
- 活動的
- よく考えずに行動する
- 早口でよく喋る
双極性障害とADHDの違いは「周期性の有無」です。
ADHDの方は、気分の変化が長く続かず、強烈ではありません。
統合失調症
統合失調症は、脳内で情報の取捨選択に不具合が生じることが原因といわれています。
発症しやすい年齢は、15歳から30歳頃で、幻覚や幻想などの陽性症状、意欲の減退や感情の起伏がなくなる陰性症状の二つの症状がみられます。
学習障害(LD)
全般的な知的水準は標準的ですが、計算や読み書きなどの特定の学習が極端に苦手な場合を指します。
学習障害は発達障害のひとつです。
学習障害には次のようなものが挙げられます。
- 読字障害
…文章を読むのが極端に遅く、内容の理解ができない - 書字障害
…読むことはできても、文章や漢字を書くことができない - 算数障害
…簡単な計算ができない。数量などの概念が理解できない
上記の他に、行動障害(非行)、反社会的行動(犯罪)、パラフィリア(異常性愛)、チック症・トゥレット症候群(運動性とチック、音声チックの併発症状)などを併発する場合があります。
次回、「発達障害に似た症状と発達障害の治療法③ ~発達障害を疑ったらまず受診」、へ続く