会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第21回は、「職場でみられる発達障害…『細かいことにこだわる。全体が見えない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『思い通りにならないと、カッとなって暴言を吐く』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例14】…「思い通りにならないと、カッとなって暴言を吐く」(Eさん・30代男性)
Eさんは、ブライダル関係の会社を経営している37歳の男性です。
Eさんは小児期から多動的・衝動的で、些細なことで友人とよくトラブルを起こしていました。
整理整頓、字や数字を書き写すなどの細かい作業が苦手で、忘れ物も多く、浪費癖もあったそうです。
成人した今も事務作業が苦手で、伝票がうまく書けず、発注先や仕入れ個数を間違えたり、顧客情報を紛失するなどミスを繰り返し続けています。
しかし、自分のミスは棚に上げて、人の失敗には大変厳しく、従業員がミスした時などは、「バカヤロー!」「ふざけるな!」「給料ドロボー!」などと怒鳴りつけ、聞くに堪えないような罵詈雑言を連発して、職場は一瞬で重苦しい雰囲気に…。
Eさんは、自分の思い通りにならないと、すぐにかんしゃくを起こします。
例えば、出前で注文したメニューが「今日はやっていない」と言われたり、あてにしていた社員が風邪で休んだり、挨拶の声が小さい、しまいには、「こんな時になんで雨が降ってくるんだ!」など、些細なことでもカッとなってしまうのです。
また、自分の興味があることには饒舌で、業務中でもおしゃべりが止まりません。
趣味の話になると機嫌よく何時間も熱弁をふるうため、周囲は閉口してしまいます。
さらに、人から話を振られても無視して、一方的に話し続けるため、会話を成立させるのは困難です。
そんな上司の下で働く部下のストレスは大きく、正社員やパート、アルバイトを含め退社する人が後を絶ちません。
スタッフがなかなか固定されないために経営にも支障が出始め、Eさんの悩みは深刻なものになっています…。
考えられる症状
感情のコントロールがうまくできず、後先考えずに行動するのはADHDの衝動性の症状です。
些細なことで怒りが爆発して切れ、周囲に当たり散らしたり、行き当たりばったりの行動をとったりします。
行動だけでなく暴言を吐くことも少なくありません。
一方、ASDは「自分のルール」にこだわりが強く、それから外れるとキレることがあります。
過去の嫌な経験などをフラッシュバッグさせる「地雷言葉」に接したときにも怒りをみせます。
Eさんの場合、両方の傾向があるようです。
ケアレスミスの繰り返しも、ADHDの注意欠陥からくるものです。
また、ADHDの人は、人とじっくり話し合うことが苦手で、注意散漫なため相手の話をきちんと聞くことができないため、自分の話したいことだけを一方的に話す場合があります。
周囲の対応策
いつキレるかわからず、決定事項もコロコロ変わり、報告したことも忘れてしまう…こんな上司では職場は混乱しますし、部下も疲弊します。
まずは、口頭で伝えた上で、さらに紙にも記した要件を伝えて確認を怠らないようにしましょう。
気が散りやすい傾向もあるため、相談などの案件は一度に複数もちかけることはなるべく避けましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『いつも落ち着きがない。せっかちで順番が待てない』」、へ続く