会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第22回は、「職場でみられる発達障害…『思い通りにならないと、カッとなって暴言を吐く』」の続き、「職場でみられる発達障害…『いつも落ち着きがない。せっかちで順番が待てない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例15】…「いつも落ち着きがない。せっかちで順番が待てない」(Yさん・30代男性)
Yさんは都内の私立大学を卒業後、住宅販売会社に就職した入社6年目の男性です。
プライベートでは、SNSで知り合った仲間たちと、マラソンやボルダリングなどを活動てきに楽しんでいます。
Yさんは飽きっぽい性格で、デスクワークや単調な仕事が苦手です。
朝一番、会社に着くなり、自分のデスクに10分も座っていられず、その周辺をウロウロし始めます。
打ち合わせの最中でも、貧乏ゆすりが止まらず、何度も手足を組みなおしたり、横や後ろを向いたり、席を立ってタバコを吸いにいったりと、異常なほどソワソワしていて、そのせわしない様子は、周囲が不穏に感じるほどです。
会議では、相手の発言が終わらないうちに、自分の意見を立て続けに発言しはじめたり、話の流れとは全く関係ないことを突然言い出すこともあります。
「あの人は大丈夫なの?」と、ぎょっとされることも少なくありません。
Yさんは会議に限らず、普段の会話でも、人の話を最後まで聞かない、話の腰を折る、人の会話に割り込むなど、スムーズな会話ができません。
昔から待つことが大嫌いだったというYさんは、食堂やレジなどでも並んで待てず、空腹なのに「待つくらいなら…」と、と朝食を抜いたり、列に割り込んでしまい注意や非難を受けることもしばしばあるそうです…。
考えられる症状
気が散りやすく、集中力を維持できない、いつも落ち着きがなく、ソワソワしているのは、多動・衝動性のADHDの人にみられる症状です。
人の話を最後まで聞けないという点も、対人スキルや社会性の未熟によるもので、ADHDの基本症状の一つとなっています。
周囲の対応策
落ち着きがない部下には、体をよく動かしたり、変化のある部署へ配置替えするというのも一つの方法です。
ただし、本人にとって、それが不本意な異動な場合は、逆効果になることもあるので注意が必要です。
デスクワークの場合は、こまめに休憩を取らせたり、他人が気にならないようなデスク配置をするなど、集中しやすい環境を作ります。
また、一方的に話すことが多い人には、まず相手の話を聞くこと、話を遮らないこと、相手の言葉を否定しないこと、「お話してもよろしいでしょうか」など、一言断わってから話しだすこと、などを具体的に指示しましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『相手の非を許すことができない。正義感が強く、自分が常に正しいと思い込む』」、へ続く