会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第23回は、「職場でみられる発達障害…『いつも落ち着きがない。せっかちで順番が待てない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『相手の非を許すことができない。正義感が強く、自分が常に正しいと思い込む』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例16】…「相手の非を許すことができない。正義感が強く、自分が常に正しいと思い込む」(Sさん・30代男性)
Sさんは、有名私立大学を卒業し、大手建設機器メーカーに就職した、30代前半の男性です。
Sさんは、ルールを守らない人がいることに我慢できず、目の前のルール違反を注意せずにはいられない性分です。
先日も、道路で歩きスマホをしている人を注意して言い合いになり、警察が間に入るという騒ぎを起こしたばかり。
もちろん、会社でもSさんのルール違反の取り締まりは厳しく、会議中にちょっとした雑談を交わす社員にも、「うるさい!」と、大きな声で注意してしまい、和気あいあいとした雰囲気を壊してしまいます。
相手は後輩や同僚だけでなく、上司や役員だろうとおかまいなしです。
また、社内のロビーで喫煙するお客様にも「ここは禁煙ですよ!張り紙が見えないんですか!」と、怒鳴って、場を凍りつかせたこともあります。
上司から「ああいうときは私からお客様にさりげなく注意するので、君は黙っていなさい」と言われたものの、Sさんは納得できません。
スキルも高く、仕事熱心なSさんですが、今はトラブルメーカーと陰口を叩かれ、距離を置かれる浮いた存在になってしまっているようです。
比較的仲のいい同僚から「何でもルールや価値観で完璧にやろうとして、人にもそれを強要するから反感を買っているんだぞ」と、言われたのですが、「それのどこが間違っているのか…」と、Sさんにはわからないようです…。
考えられる症状
周囲から見て、異常なほどの頑固な思考パターンを持ち、二者択一や完璧主義に陥りやすいのは、ASDにみられる症状です。
自分のやり方にこだわって、妥協しません。
言っていることは正しくても、空気を読んだ伝え方などに配慮することが難しいため、周囲と軋轢を起こし、距離を置かれて孤立してしまうことがあります。
また、雑談が異常に気になるのは、ASD特有の感覚過敏が影響していると考えられます。
周囲の対応策
周囲の人は、その発言に悪意がないことをまず理解し、その都度、上司なり同僚なりがひとつひとつ伝え方や処し方を伝えていきましょう。
特定の音に敏感なことがあるため、雑談などが気になるようであれば、会議中の私語はなるべく控える、会議のメンバーを検討するなどの対応も必要です。
次回、「職場でみられる発達障害…『感情が不安定で依存症に陥る。クレーマーになる』」、へ続く