会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第26回は、「職場でみられる発達障害…『相手に関心がないので双方向の会話やコミュニケーションがとれない』」の続き、「職場でみられる発達障害…『怒られても反省せず、懲りずに同じ失敗を繰り返す』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例19】…「怒られても反省せず、懲りずに同じ失敗を繰り返す」(Yさん・20代男性)
Yさんはマンション管理会社に勤務している入社5年目の男性です。
学生時代から遅刻が多く、就職してからも「遅刻グセ」は直っていません。
社会人になってからは、「支度に時間がかかる」「初めての場所に置くときは、一応時間を計算して家を出るが、必ず道に迷ってしまう」「外出中に混乱して目的地がわからなくなることがある」などの理由で、約束の時間に遅れてしまいます。
得意先との打ち合わせに遅れるなど、営業職としては致命的なミスを繰り返すYさんは、そのたびに上司から厳しい叱責を受けますが、これがまったく響いていません。
素直に謝らないばかりか、「時間を読み間違えた」「3時じゃなくて23時と聞いていた」「うちの下の部屋がボヤを出した」など、誠意のない弁明を繰り出して、反省の様子がみられません。
上司や先輩たちが親身になって注意しても、どこか上の空で、他人事のように助言や指導を真摯に受け止めないYさん。
説教中に携帯を見るなど、相手の気持ちを逆なでするような不遜な態度もあり、周囲からは呆れられる一方です。
仲間内の世話話には参加することもなく、たまに話をしても、難解な専門用語を多用し、学者ぶった表現で、一方的にとうとうと話を続けるため、相手が理解しているかどうかは問題にしていません。
Yさんは他の部署への異動を打診されましたが、「なぜ自分なのか?」と憤っています…。
考えられる症状
計画を立てること、管理が不得意、時間を守ることができないのが、ADHDの特徴です。
遅刻の理由も、その場しのぎの虚言ではなく、不注意傾向からくる本当のことかもしれません。
また、整理整頓が苦手なため、外出する間際になって、持参するものが見つからないなど、予定の時間に出かけられないこともあり、必然的に遅刻も増えてしまいます。
叱られても響かないのは、ASDの傾向にある「自分は間違っていない」、という頑なな気持ちがあるためで、あくまで「自分ルール」が優先されるのです。
人と親しくしたいという気持ちが希薄なASDの人は、仲間に入ろうとしないことも多いですが、たまに話すと難解な用語を使ったり、まわりくどく、一方的に話す傾向があります。
周囲の対応策
時間、約束を破り続けると、職場だけでなくプライベートでも良好な関係を維持することが難しくなります。
遅刻しがちなことを認識させ、所持品を事前に確認して玄関のそばに置いておく、などの事前準備を怠らないように指導しましょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『怒られても反省せず、懲りずに同じ失敗を繰り返す』」、へ続く