会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第27回は、「職場でみられる発達障害…『怒られても反省せず、懲りずに同じ失敗を繰り返す』」の続き、「職場でみられる発達障害…『協調運動が苦手で事故に遭いやすい。TPOに合わせた声出しができない』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例20】…「協調運動が苦手で事故に遭いやすい。TPOに合わせた声出しができない」(Mさん・30代女性)
Mさんは、有名大学を卒業後、コンサルティング会社に入社し、プロジェクトマネージャーとして働いているバリバリのキャリアウーマンです。
「文系や理系は成績が良かったんですが、音楽や体育、美術などの実技系は全くダメで、子どもの頃から自分でも不器用さは自覚していました」というMさん。
事故に遭うことも多く、小・中・高校で1回ずつ自動車との接触事故に遭っていて、骨折や捻挫をすることが多かったそうで、成人してからも普通に歩いていてドアやデスクに肩や足があたったり、お茶をこぼして火傷をしたりと、生傷が絶えないとのこと。
また、Mさんは自分のフィジカルな力を調節するのが苦手で、声は常に大きく、TPOに合わせて調節することができないため、社外秘事項からデリケートな内容の話まで、通常の会議室では筒抜けになってしまいます。
また、ドアの開閉なども力いっぱいやってしまうため、オフィス中に大きな音が響き、パソコンの入力もすごい力で叩きつけるように打ち込むため、デスクが近い人にとってはまさに「騒音」です。
ペンを置く、引き出しを閉める、受話器を置く…などの生活音すべてがドキッとするほど大きいのです。
Mさんは人柄もよく屈託がありませんが、周囲からは「がさつ」「うるさい」「怖い」「いちも怒っているように見えて近寄りがたい」と、あげている業績に比べると、本人の評価は芳しくありません…。
考えられる症状
スキップ、縄跳びなどの粗大運動(歩く、座る、立つなどの生活上で必要な動作)。
紐結びやハサミの使い方などの微細運動(手や指を使った細かい作業に必要な動作)。
これらの協調運動の不器用さから、ADSの人は運動が苦手なことがほとんどです。
さらにASDの人には、感覚過敏の反対で、過鈍性の問題を抱えることがあり、話す時の声の大きさの調整ができない場合があります。
また、ADHDの人は注意欠如や集中力に欠けるところがあるため、事故に遭いやすい傾向があります。
周囲の対応策
場合によって、事故は命の危険を伴うため、しっかり注意するように言い聞かせていくしかありません。
声の大きさは、特に周囲の人にストレスを与えてしまうため、その都度、注意していきましょう。
「大・中・小」と、シチュエーションを分けて、図式化すると効果的です。
次回、「職場でみられる発達障害…『整理整頓、片付けができない。デスクや部屋が乱雑』」、へ続く