会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第29回は、「職場でみられる発達障害…『整理整頓、片付けができない。デスクや部屋が乱雑』」の続き、「職場でみられる発達障害…『会話のキャッチボールができない。仕事のストレスから買い物に依存』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例22】…「会話のキャッチボールができない。仕事のストレスから買い物に依存」(Mさん・20代女性)
Mさんは、福祉関係の専門学校を卒業後、保健施設に就職した20代半ばの女性です。
小学生の頃から怒りっぽい性格で、じっと座って授業を受けるのが苦手だったというMさん。
算数は単純な計算は得意でしたが、国語が苦手で、文章問題になると全く頭に入ってこないためイライラして、つい友人を怒らせるようなことばかり言っていたそうです。
そのため、親友といえる友人はいませんでしたが、学生時代は周囲から孤立することはなかったと言います。
しかし、就職してから、Mさんの生活は一変。
職場は40代以上の人が多く、話が合いません。
また、Mさんは軽い雑談でも、話をしながら仕事ができないため、「話す」「作業をする」どちらかひとつのことしかできません。
仕事中に声をかけられても返事をしないため、周囲からは声がかからなくなり、休み時間もひとりで過ごすようになりました。
「決められた手順が守れなかったり、伝票は書類の書き方、コピーの取り方など、教わってもその通りにできず周囲をイラつかれてしまいます」
「スケジュール管理が苦手で、頼まれたことを何時からやれば締め切りに間に合うのか、計画的にできないのです」
「周囲の人に相談したいのですが、『何度も聞くな』と怒られそうで切り出せず、結果的に途中で投げ出してしまうこともありました…」
周囲からは「仕事の覚えが悪い」「役に立たない」と、注意を受けるようになり、Mさんは大きなストレスを感じるようになりました。
そんな時、「自分へのご褒美」と、何万円もする化粧品をクレジットカードで購入したMさんは、「その時、とても気分が良くなったんです。就職して初めて楽しいと思えたほど」そうです。
高価な買い物をすると、イライラや不安が消えるため、それ以降、ハイブランドの靴やバッグなどを毎月のように購入するようになりました。
「一度欲しいと思うと、お金が足りないのはわかっていても、諦めることができなかった」と、複数のカードローンを組んでしまい、すぐに返済に窮してしまいます。
親に相談すると、厳しく咎められ、Mさんは1年で退職。
実家に戻りましたが、その後も「買い物」がやめられず、現在は老人介護施設を転々としながら短期のアルバイトを繰り返しています…。
考えられる症状
子どもの頃から、多動、注意欠陥、また学習障害(LD)や、ADHDの症状がみられています。
並行して複数の作業ができず、苦手な事務作業などもケアレスミスを繰り返してしまいます。
管理が苦手なため、計画を立てて物事に取り組めず、納期が守れないため「仕事ができない人」となってしまったと考えられます。
働きにくさ、叱られ続けることによる自尊感情の低さから、買い物に依存するという随伴症状も出ています。
周囲の対応策
ADHDの人は、ワーキングメモリーが限られている場合があるため、口頭で注意されても記憶にとどめ続けることが難しいことがあります。
可視化したメモを常に確認できるところに貼るなどして、本人に作業工程をその都度見せるようにしましょう。
買い物については。親なども身内が介入し、クレジットカードを管理する必要があります。
次回、「職場でみられる発達障害…『聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏』」、へ続く