会社のデスクの上や、その周りもゴチャゴチャ。
会議や打ち合わせには毎回遅れるし、何をやらせても段取りが悪く、同じミスを繰り返す…。
あなたの部下や同僚にそんな人はいませんか?
もしかしたら、その人は「発達障害」かもしれません。
「発達障害の人と共に働くこと」では、職場で発達障害の人と接する場合の対応策や、どのような工夫がされれば、当事者とその周囲の人たちが気持ちよく働けるかをまとめています。
第31回は、「職場でみられる発達障害…『聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏』」の続き、「職場でみられる発達障害…『人の名前が覚えられない。失礼な発言を繰り返す』」を解説していきます。
目次
職場でみられる発達障害
ここでは、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの例をあげて、周囲がどのように対応すればよいかを提案していきます。
アスペルガー症候群を含むASDとADHDの複合型だったり、その複合に度合いが異なったり、加えて二次障害を抱えるなど、個々でさまざまな病態がみられるため、事例が似ているからといって診断や対応策が全て当てはまるとは限りません。
また、大前提として、これらに似た様子の人を発達障害と決めつけることは最も回避するべきことです。
【事例24】…「人の名前が覚えられない。失礼な発言を繰り返す」(Yさん・40代男性)
Yさんは、高校、大学と都内の有名校に進学し、その後、大手の広告代理店に入社した40代のベテラン社員です。
仕事も本人なりに真面目に取り組んでいますが、営業では思ったような成果をあげられず、勤続22年で異動は8回。
広告代理店という仕事の性質上、クライアントによって柔軟な対応を求められますが、Yさんの、「空気が読めない」「ニュアンスを感受できない」「無神経」といった振る舞いが多く、トラブルを招いています。
また、Yさんは取引先の相手の名前と顔がなかなか覚えられません。
大西さん → 大熊さん
佐々木さん → 斉藤さん
…というように、微妙に間違って記憶してしまいます。
何度も間違えるので、上司の電話やメールには取引先からの嫌味まじりのクレームが絶えません。
Yさんには他にもこんなエピソードがあります。
得意先の社長がイズの出張土産に、Yさんに干物を渡すと、「あ~、金目鯛かぁ。今、金目鯛って旬じゃないんですよねぇ」と、言ってしまったり…。
また、接待ゴルフの帰りに一緒に回っていた取引先の部長から「ボクの使っていたクラブをあげるよ」と言われたものの、「クラブセットって場所とるんですよねぇ。邪魔だから部長の家に置いてください。使うときに取りにいきますので」と断るなど、相手の気持ち(好意)や空気が読めないYさんは、いつも人間関係でつまずいてしまい、業務は一生懸命努力していますが、思ったような成果をあげられないでいます…。
考えられる症状
学習障害のために、人の名前と顔を覚えられないこともありますが、ADHDには興味がない対象だと注意散漫になり、意識に留められない場合があります。
思ったことをそのまま口に出してしまうのは、ADHD、アスペルガー症候群、共にある症状ですが、ADHDの場合は衝動性から、アスペルガー症候群の場合は、相手の気持ちが汲み取れないことからくるもの。
Yさんの場合、後者の相手も気持ちが汲み取れないことからくるものと思われます。
周囲の対応策
ベテラン社員だからこそ、失言が許されない場面も多くあると思われます。
仕事相手との大切な会食、打ち合わせなどは極力避けるようにさせて、表に出ない分野で得意なことを活かせるような仕事を検討する必要があるでしょう。
次回、「職場でみられる発達障害…『想定外の出来事に対応できずパニックを起こす』」、へ続く