今回は、大人の「軽度知的障害」について、詳しくみていきます。
前回までの記事↓
知的障害とは?① ~幼児期や学童期に発覚することが多い!知的障害の特徴~
知的障害とは?② ~知的障害の原因とは?~
目次
軽度知的障害とは?
一般的に、知的障害は「18歳までに発症するもの」と言われていますが、「軽度知的障害」の場合は、子どもの頃にそれらの症状に気づけないことがあります。
というのも、軽度のため外見からは判断できず、症状も分かりづらいためです。
単純に「〇〇が苦手な子」という風に捉えられ、障害だと思われずに見過ごされてしまうことが多くあります。
- 言葉の発達が遅い
- 感情のコントロールが苦手
- 自分の気持ちを伝えるのが苦手
- 物事を理解するのに時間がかかる
- こだわりが強い
など。
これらの症状はあっても、日常生活は普通にこなせるため、なかなか周りからは知的障害だと気付かれません。
一見すると症状が軽いので、周囲からは「なんとかなるだろう」と思われ、十分な指導や配慮が行われないまま大人になってしまいます。
年齢を重ねることで考える力を身につけられるため、ますます障害の発見が遅れます。
気付かれにくいがために、本人は常に生きづらさを感じ、大人になってからうつ病などの二次障害をきっかけに、知的障害と診断を受けることも少なくないようです。
大人になってから知的障害だと気付く場合は、仕事の覚えが悪い、指示をうまく理解できないなどを感じ、自分から専門機関などで検査を受けて知的障害と診断された、ということが多いようです。
軽度知的障害の人が大人になって困ること
- なかなか仕事を覚えられない
- 報・連・相がうまくできない
- 周囲から孤立してしまう
- スケジュール管理が苦手
なかなか仕事を覚えられない
仕事内容を理解するのに時間がかかったり、手順を覚えるのに時間がかかったりします。
また、抽象的なことは理解するのが難しい場合もあるので、指示する側もわかりやすく簡潔に伝えるように心がける必要があります。
なかなか仕事を覚えられなかったり、すぐに忘れてしまうという場合はメモをとるなど工夫してみましょう。
報・連・相がうまくできない
仕事において、報告・連絡・相談が大事とよく言われますが、知的障害の方はその「報・連・相」が苦手なことがあります。
このような場合、上司と相談して、
- こういう時には相談する
- 定期的に様子を見にきてもらう
- 毎日、日誌をつける
など、やり方を決めておくというのも一つの手段です。
周囲から孤立してしまう
仕事をする上で、周囲の人も知的障害についての知識が必要です。
知的障害について理解がある環境で働くようにしましょう。
「○○が苦手なので~してほしい」など、自分の障害について周囲の人に伝えることも大切です。
しかし、周りから浮いてしまって働きづらかったり、いじめがあるような場合は、職場を変えるのも一つの手です。
障害がある人が働く場合、一般枠での一般就労と、障害者雇用枠での就労などがあります。
一般枠での一般就労は、障害がない人と同じ条件で働きます。
職種、待遇面など選択肢は幅広く、昇給や昇進の機会にも恵まれている反面、障害を持っている事を前もって伝えない(クローズ)状態での就労となるため、得意・不得意などの配慮はあまり期待できません。
療育手帳(知的障害があることを証明する手帳)や障害者手帳などを持つ人が応募できる障害者雇用枠での就労は、障害特性を理解した上で雇用するため、得意・不得意や体調に関する相談や配慮がしやすい一面があります。
仕事の内容も、障害の内容に配慮した業務になっている一方、一般就労より給料が低いのが一般的です。
スケジュール管理が苦手
スケジュール管理が苦手という場合は、その日の自分のスケジュールを紙に書き出し、周囲の人と共有するのもいいかもしれません。
指示を出す側も、「適当に」「大体~くらい」など曖昧な表現は避け、具体的な数字で「○時までに」など伝えるようにしましょう。
軽度知的障害まとめ
軽度知的障害の人は、日常生活など基本的なことが全くできないわけではありません。
「頑張ればできる」
しかし裏を返せば、「頑張らないとできない」、「時間はかかるけど何とかできる」という状態とも言えるのです。
「生きずらさの原因は、もしかしたら障害かもしれない」
そう思った方は、市町村の保険センターや精神保健福祉センターなど、さまざまな支援制度が用意されています。
これらの支援を活用し、自分に合った環境を見つけていきましょう。