誰でも人前に出たり、恥ずかしいと思ったら、緊張したり不安になったりするものですが、皆さんはいかがでしょうか?
人に見られていると思うと、いつもはできることがうまくできなかったり、汗をかいたり、心臓がドキドキしたり、体が震えたり、顔が赤くなったり…。
不安によって身体症状があらわれることもあります。
このような不安や緊張状態によって身体に変化が起こるのは、自律神経のうちの交感神経系の働きが活発になることで、身体にいろいろな反応が起こると言われてします。
しかし、これらの反応は人によって程度が異なりますし、人前でも全く緊張していないように見える人もいます。
社交不安症とは
社交不安症/社交不安障害(SAD/Social Anxiety Disorder)とは、人と接する場面で強い不安を感じてしまい、人前に出たり、人と接することを避けてしまう病気です。
「単純に恥ずかしがり屋な性格なのでは?」
などと思われがちですが、医学的にも病気と認められており、日常生活において困難が生じる[不安症群/不安障害群]という精神疾患のカテゴリーの中の一つです。
不安症群には社交不安症のほかに、
- パニック症
- 限局性恐怖症
- 全般不安症
- 分離不安症
などが含まれます。
不安症は、必要以上に過剰な不安を感じてしまい、「悪いことが起きる」と怯えたり、不安を感じる行動を避けたり(回避行動)する病気です。
社交不安症は、不安症の中でも、特に人前に出る場面や人と接する場面などに強い不安を感じる病気です。
実は世界中の人が悩んでいる社交不安症
日本人は一般的にシャイな民族といわれいることもあり、社交不安症の患者の数も海外より多いのでは?と思われがちですが、実は患者数はアメリカの方が多いという統計データがあります。
また、アメリカでは、全人口の6.8%が社交不安症に罹患しているという調査もあります。
一方、日本は「恥の文化」という国民気質が受け入れられていることもあり、人前で恥ずかしがることは一般的に広く理解されやすいと考えられています。
アメリカのように、日本より、「自分の意見を堂々と言う」ことが当然視されている文化圏では、社交不安を持つ人がさらにつらい思いをして、日常生活も困り、助けを求めるということが、患者数の多さの背景にあるという可能性が考えられます。
逆に、日本のように「恥ずかしがり屋」「引っ込み事案」が受け入れられやすい環境では、社交不安が病気だと気づかれにくいのかもしれません。
しかし、患者数が少ないからと言って、社交不安に悩んでいる人が少ないと断定することはできません。
患者は若い人が多い
以上のように、文化的背景の違いから、アメリカなどの諸外国と単純に比較はできませんが、日本では、一般人口の0.7%が社交不安症を持つという研究があり、高い有病率になります。
また、発症年齢が10代半ばから20代前半と若いことが特徴です。
思春期は、自我が目覚める時期でもあります。
他人の目に映る自分の姿が、幼少期、児童期より重要になってきます。
こうした時期に、対人関係でのつまずきがきっかけとなり、過剰な不安につながることがあります。
また、発症年齢が若いゆえに、社交不安が自分の性格・欠点ととらえられてしまい、治療することが可能な病気なのに見過ごされてしまうことが多くあります。
近年、社交不安症という病気の認知度は広まってきていますが、まだ十分とは言えません。
本人だけでなく、家族や学校の先生、友人など周囲の人々が病気に気づいてあげることが大切です。
また、社交不安症は若い人だけが発症するわけではなく、成人になってから発症することもあります。
社交不安症の人は、ほかの精神疾患(うつ病、その他の不安症、アルコール依存など)と合併することも多いため、放置せず、積極的に治療する必要がある病気なのです。
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次回、「社交不安症の症状」へ続く。