「人前に出るのが苦手…」
「人がいるところで何かをするのが苦手…」
そんな風に感じている人は意外と多いものです。
なぜ「人が怖い」と感じてしまうのでしょうか?
社交不安症は、子どもや若者だけでなく、大人でもつらい思いをしている人が大勢いる病気です。
「社交不安症ってどんな病気?」では、社交不安症の全体像から、症状、不安の軽減法などについて、詳しく解説していきます。
第12回は、の続き、「医療機関でおこなう治療法…② 認知行動療法とは」の続き、「医療機関でおこなう治療法…③ 不安を知る」についてみていきます。
目次
医療機関でおこなう治療法…③ 不安を知る
無理になくそうとせず、付き合い方を学ぼう
認知行動療法は、社交不安症がどんな病気かしっかり学ぶことからスタートします。
ますは不安の役割について知っておきましょう。
実は不安を抱くのはそう悪いことではないのです。
不安そのものは必要な感情
社交不安症の患者さんは、よく「不安をなくしたい」と思い込みがちですが、不安があるからこそ、私たちは安全に暮らすことができる上、適度な緊張は成績を上げたり、より良い結果を生むためには欠かせないのです。
治療では、不安をなくすのではなく、上手に付き合うことを目指していきます。
適度な不安は安全を守る
不安を完全になくしてしまうことは、快適どころ危険な状態です。
不安は私たちの行動を抑制する重要な要素でもあるのです。
生命の安心を脅かすものへの不安
不安・恐怖・警戒心は、危険を早く察知し、命を守るために欠かせません。
大昔の話ではなく、現代も私たちの健康と安全を守っているのです。
警戒・緊張…この通りは、車が多くて危ないなあ
雨に備えて傘を持っていく、危険の多い道を避けるなど、健康や安全を確保する行動に繋がります。
・身の回りの危険に過敏になり、動けなくなってしまう
危険の程度に不釣り合いなほど不安・恐怖を感じると、過剰な準備をしたり、外出できなくなったりします。
社会的な安心を脅かすものへの不安
自分の評価を脅かしかねない出来事に対して、不安や緊張を感じます。
社交不安症では、こうした不安が大きくなりがちです。
不安…レポートの提出期限が迫っている
緊張…明日は大切な会議がある
試験勉強をしっかりしたり、会議用の資料を事前にチェックしたりといった、前向きな対策がとれます。
・対策を立てすぎる
・不安をもたらすような出来事を避けるようなる
「これで大丈夫」という気持ちにならず、対策に追われるようになります。
評価されることを避けて「試験を受けない」「会議に出ない」など、本末転倒な事態になりかねません。
「なんとかなるさ」という楽観的な精神も大切ですが、楽観だけでは質は上がりません。
「失敗したらどうしよう」という不安が対策に繋がり、良い結果を生みます。
不安を大きくするパターンに気づこう
過剰な不安のもとになるのは、
- 構えすぎ
- 予測しすぎ
- 意識しすぎ
の3つの「しすぎ」です。
それぞれ自分のケースに当てはめて見直してみましょう。
不安のもとは自分中にある
不安の対策は自分以外のものですが、不安を育てるのは自分自身の認知や行動パターンです。
認知行動療法では、「しすぎ」が過剰な不安に繋がることをしっかり学びましょう。
備えるほど不安が続く
不安が大きいと安心しようと対策を立てすぎてしまい、これがまた不安に繋がります。
対策がかえって不安を招く
対策を立てれば立てるほど、「成功は対策のおかげ」という思い込みが強くなってしまう。
「ここまですれば大丈夫」という手応えを感じられない。
他の方法を試せなくなる
対策が成功のもとだと思い込んでいるので、他の方法を試すことができない
不安がずっと続いていく
失敗を恐れて延々と対策を立て続ける自転車をこぎに陥り、延々と不安のレールを走ってしまうことになる
予測するほど不安が強まる
社交不安症の「備えすぎ」は、「予測しすぎ」にも繋がります。
しかも不安な気持ちから常にネガティブな予測に陥りがちです。
移動になる先輩の送別会に出ることになった
気を遣う相手と、対策のとりづらい雑談をする状況は、社交不安症があると特に不安を感じやすい
予測しすぎ
もし送別会に出たら…
・もし出たら、苦手な上司の隣に座らなきゃいけなくなるかも
・突然スピーチをするように頼まれるかも
・会話が弾まなかったり、話の輪に入れないかも
…きっと、そうなるに決まってる!
その後は…
・話のつまらない人間だと思われる
・誰も話しかけてこなくなって孤立する
・自分がいるだけで職場の雰囲気が気まずくなる
…になるの決まってる!
意識しずぎ
・顔が赤くなっているな
・声が震えちゃった
・汗が出てきた
・動作がぎこちなくなってないかな
・嫌なことが起こる確率を高く見積もる
・そうなって欲しくないことばかり予測する
その場で起きるかもしれないことだけでなく、そのあとどうなるか先の先までマイナスの予測を立てて、くよくよと思い悩みます。
・周囲を気にしているようで、実は自分に注目している
「周囲からの評価が不安でたまらない」というと、周囲を意識しているようですが、実際は「自分の挙動が相手にどう見られてるか」が心配で、意識は自分に向いています。
自分が気にしすぎて、周りを冷静に見られなくなっています。
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次回、「医療機関でおこなう治療法…④ 『しすぎ』を見直す」へ続く。