「人前に出るのが苦手…」
「人がいるところで何かをするのが苦手…」
そんな風に感じている人は意外と多いものです。
なぜ「人が怖い」と感じてしまうのでしょうか?
社交不安症は、子どもや若者だけでなく、大人でもつらい思いをしている人が大勢いる病気です。
「社交不安症ってどんな病気?」では、社交不安症の全体像から、症状、不安の軽減法などについて、詳しく解説していきます。
第5回は、「社交不安症の基礎知識…① 背景と要因」の続き、「社交不安症の基礎知識…② 原因」についてみていきます。
目次
社交不安症の基礎知識…② 原因
恐怖や記憶をつかさどる部位が関係している
社交不安症では、脳の
- 扁桃体
- 海馬
- 前頭眼窩
などが関係していることがわかってきています。
社交不安症の人の脳の働きを特殊な検査で調べたところ、
「否定的な表情を見る」
などの状況で、扁桃体を中心に、認知や不安に関する部分の活動が過剰になっていました。
また、別の実験では、拒絶過敏症(※)に関わる
- 前帯状皮質
- 島
過活発になっていました。
脳は過活動が続くと、その部分の形態的変化をきたすことがあります。
そして、二次的にうつ病が併発するなど、いろいろな病状が発展していくと考えられます。
社交不安症に関わる部位
社交不安症では、恐怖をつかさどる部位だけではなく、さまざまな感情にかかわる部位の活動が乱れていることがわかってきました。
社交不安症に関わる部位
社交不安症では、恐怖をつかさどる部位だけでなく、さまざまな感情にかかわる部位の活動が乱れていることが分かってきました。
扁桃体
不安や恐怖をつかさどる部位。
とっさに体がすくむような反射的な恐怖、状況判断に伴う不安感などに関わります。
海馬
記憶をつかさどる部位。
一時的に記憶をとどめておく働きを担います。
社交不安症では、どんな状況で強い不安を感じるかといった「条件付け」に関わると言われています。
前頭眼窩
目のすぐ後ろにある部位。
意思決定や「その人らしさ」に関わり、脳の部位でも個人差が大きいと言われています。
島(とう)
脳の中ほどの奥にあり、急な感情の動きのコントロールや、自意識にまつわる心の働きに関係します。
痛みなどの不快な感覚を受け取るため、ネガディブな感情と深く結びつきやすく、社交不安症やうつ病などで活動に変化が起こります。
うそをついた時にドキドキするなどの反応を引き起こすのも、島の働きです。
前帯状皮質
脳の内側の部位で、感情や本能と深く関わる部位。
特に、認知と感情を関連づける働きを担っています。
●前帯状皮質がよい状態だと…
思考が柔軟になり、ひとつの考えにこだわりません。問題に直面した時などに、ひとつの解決法がうまくいかなくても別の方法を探すことができます。
●過活動になると…
ものごとの考え方が硬直してしまい、ひとつの考えに個室したり、つらい思い出や失敗にとらわれて後ろ向きな思考にはまり込んだりします。
●脳と症状。どちらが先かはまだ不明
脳の働きと社交不安症、うつ病とは深い関係があることは明らかです。
しかし、脳の働きにアンバランスがあるか社交不安症が起こるのか、社交不安症になったために脳の変化が起こるのかは、まだわかっていません。
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次回、「社交不安症の基礎知識…③ 経過」へ続く。