「人前に出るのが苦手…」
「人がいるところで何かをするのが苦手…」
そんな風に感じている人は意外と多いものです。
なぜ「人が怖い」と感じてしまうのでしょうか?
社交不安症は、子どもや若者だけでなく、大人でもつらい思いをしている人が大勢いる病気です。
「社交不安症ってどんな病気?」では、社交不安症の全体像から、症状、不安の軽減法などについて、詳しく解説していきます。
第6回は、「社交不安症の基礎知識…② 原因」の続き、「社交不安症の基礎知識…③ 経過」についてみていきます。
目次
社交不安症の基礎知識…③ 経過
人とのつながりがなくなっていく
社交不安症は自然に回復することはまずありません。
なんとかしようと思えば思うほど、症状に意識が向いて酷くなるという悪循環に陥ります。
その結果、集団に溶け込めず孤立したり、重症になると引きこもりを招いたりします。
特に社交不安症で困ることが増えるのは社会人になってからです。
そのため、休職・退職による経済的な問題も大きくなってきます。
また、社交不安症の根底にある強い不安感から、別の不安症やうつ病を伴うようになる人も少なくありません。
対人恐怖や回避行動などがひどくなって、パーソナリティ障害に至る恐れもあります。
社会的・世親的に悪化していく
社交不安症は人との付き合いがなくなっていくことが大きな問題です。
孤立し、社会的な生活が送れなくなります。
他の病気も併発しやすいこともさらなる社会的孤立を進めます。
心の状態はそのままでは改善しない
気の持ちよう、精神力を鍛えれば何となると思われがちですが、根底にある不安に対処しない限り、自然に改善することはありません。
他の病気を合併してくることが多い
- 不安症…パニック症(パニック障害)、広場恐怖症など、他の不安症を伴う人はかなり多いです。
- 不安うつ病…不安症に伴ううつ病は、一時的なうつ病とは症状が多少異なるため、「不安うつ病」として区別する考え方があります。
- アルコール依存症
社会的には人との関わりが少なくなる
人と接するのがつらいため、学校や会社そのものから撤退するため、周囲の人からは「そんな理由で転職するの?」などと驚かれることもしばしば起こります。
- 不登校…クラスに溶け込めず、学校生活がつらくて登校できなくなります。早ければ中学生から始まります。
- 転職…営業・接客業など、人と関わる仕事を避け、一人でできる職業を求めて転職を繰り返す人もいます。
- 休職…プレゼン・会議・打ち合わせなど、苦手な場面から逃れようと、休職する場合があります。また、うつ病を併発し、休職せざるを得ない場合もあります。
- 退職…仕事上の苦痛が大きすぎるために、辞めてしまう人もいます。社交不安症の患者さんの約4割は無職、というデータもあります。
他人と深い関係が結べない
学校や職場で社会的な繫がりを持てません。
友人、仲間などプライベートでの深い関係をつくるのも難しくなり、恋愛・結婚に支障をきたします。
引きこもり・孤立
不登校は退職は、引きこもりの原因となります。
また休職を繰り返していると、人間関係を築くのがますます難しくなり、孤立を深めてしまいます。
「不安抑うつ発作「が起こることがある
「不安抑うつ発作」とは、その名の通り、強い不安や抑うつが突然、発作的に沸き上がる状態です。
元々、パニック症や、非定型うつ病で起こることが分かっていましたが、その後の研究で、社交不安症でも44パーセントの患者さんが不安抑うつ発作を経験していることが分かりました。
問題行動を起こしやすい
不安抑うつ発作は、発作自体がつらいだけでなく、つらさを紛らわすための行動がさらに問題を大きくします。
気持ちが落ち込むだけの場合は、ふて寝するなどでやり過ごすことができるようですが、不安や焦燥感、非哀歓が強い人は、リストカットなどの自傷行為や過食、飲酒などの問題行動を起こし、周囲を巻き込んでしまいます。
不安抑うつ発作がおきるとつらい気持ちが襲いかかる
「発作」の名の通り、抑うつ案、不安、恐怖、焦燥感などが襲いかかり巨大な感情の波にのまれてしまいます。
最初に涙が出てくる
精神的な症状より先に、突然わけもなく涙があふれてとまらなくなります。
その後、さまざまな身体症状を伴う場合もあります。
- 息切れ
- 胸がドキドキ痛む
- めまい
- 震え
- 体が冷えたりほてったりする
など。
つらい気持ちが沸き上がって止まらなくなる
涙に続いて、激しい不安やイライラ感が沸き上がります。
さらに自分の境遇を悲しんだり、周囲の人に嫉妬したりと、虚しさや強い焦りに襲われることもあります。
過去のつらい記憶が呼び起こされる
発作中に、以前経験した嫌な思い出が、突然頭の中によみがえることがあります。
そのときの気持ちまで思い出し、つらさが増します。
- 抑うつ感
- 強い悲しみ
- 自己嫌悪
- 虚しさ、無力感
- 不安、焦燥感
- 自分を責める気持ち
など。
対処法も問題になる
発作のつらさを紛らわすために自分を傷つけたり、身近な人に助けを求めたりします。
例えば、昔の恋人に電話をして延々と当時の苦情を訴えるなど、普段では考えれない行動をすることもあります。
不安抑うつ発作がある患者さん94人に対し、発作時の対応法についてアンケートをとった結果、発作が起きた時の状況や、その時の程度によって対応法が異なるようです。
(上から多い順に)
- ふて寝
- 何もしない
- 他社への連絡
- 自傷行為
- 頓服薬を飲む
- 叫ぶ
- 他人にあたる
- ものにあたる
- 過食
- 遁走
- 居場所を変える
- 買い物
- 飲酒
- 音楽を聴く
- 映像を見る
- 大量服薬
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次回、「社交不安症の基礎知識…④ 受診先」へ続く。