「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するともいわれている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第1回は、「原因不明の精神疾患『統合失調症』」についてみていきましょう。
目次
原因不明の精神疾患「統合失調症」
脳内の何らかの障害でおきる精神疾患
「統合失調症」とは、幻覚や妄想といった症状を特徴とする精神疾患のひとつです。
以前は「精神分裂病」という名で呼ばれていましたが、“精神がバラバラになる”という病名から、「人格が崩壊する怖い病気」「一生治らない、病院から出られない」などの誤解や偏見を持たれがちでした。
そのため、受診の機会が遅くなったり、治療が思うように進まないなど、回復を困難にするケースが多くみられました。
しかし、近年は病気の研究が進み、早期に適切な治療をすれば、症状の軽減や回復も十分可能であることがわかってきました。
薬物療法をはじめとする治療法も進歩し、社会復帰を果たす患者さんもかなり増えてきています。
そして、2002年「精神分裂病」は「統合失調症」という病名へ正式に変更されました。
「統合」は、思考・感情・判断力・行動などといった、精神活動の要素を1つの目的に沿ってまとめる能力を意味します。
「失調症」は、その能力が一時的に変調をきたしている状態をいいます。
つまり、「統合失調症」とは、
といえます。
では、その原因はどこにあるのでしょうか。
それは、精神活動を司る「脳」にあります。
食べ物の消化を司る胃腸が障害されれば、腹痛・下痢・便秘などを起こすように、統合失調症の場合、脳内の何らかの障害によって引き起こされる症状が、幻覚や妄想だったりします。
統合失調症は精神疾患の一つですが、“脳の病気”であり、体の病気と同様、治療が必要な病気なのだ、という理解が必要です。
100人に1人が発症している身近な病気
「統合失調症は珍しく特殊な病気」だと思っている方も多いかもしれませんが、厚生労働省が3年ごとに行っている『患者調査』によると、統合失調症は、またはそれに近い診断名(統合失調症型障害、妄想性障害など)で医療機関にかかっている患者数は、77万3000人と推計されています。
この数字が大きいのか小さいのか、わかりづらいので他の病気と比較してみましょう。
生活習慣病の代表でもある「糖尿病」の患者数は、316万6000人です。
糖尿病を患っている人は、皆さんの周りにも何人かいるでしょうから、患者数は非常に多いということがわかりす。
近年の高齢化に伴い、増え続けている「アルツハイマー病」は、53万4000人です。
統合失調症は、これよりも多いということがわかります。
誰もが知っているだろう「胃・十二指腸潰瘍」の患者数は、31万8000人です。
統合失調症の患者数は、その2倍以上と、決してまれな病気ではないことがおわかりいただけると思います。
また、統合失調症の発症率ですが、世界各国の報告から、およそ1%と推定されています。
日本の統計による患者数が1%に満たないのは、発症しても医療機関を受診していない人、治療を途中で止めてしまった人が数多くいるためです。
そのような人たちは統計に反映されないため、潜在的な患者数を含めると、日本の統合失調症患者の数は、100万にを超えると考えられています。
つまり、統合失調症は、100人に一人が発症する身近な病気で、いつ誰が発症しても不思議ではない病気だということです。
若年層での発症が多い病気
統合失調症は「いつ誰が発症してもおかしくない病気である」と言いましたが、発症年齢には特徴があります。
ガンや生活習慣病など、加齢ともに発症リスクが高まる病気が多い中で、統合失調症は若年層での発症が多いのです。
10代後半から30歳代にかけての発症が最も多く、全体の70~80%を占めています。
発症のピークは20歳前後にあり、平均は男性が27歳、女性は30歳と、男性の方が若干早く発症する傾向にあるようです。
10歳以下で発症するケースは少なく1%未満ですが、小児期での発症のまれにあり、また中年期や老年期に発症することもあり、発症年齢にピーク期はあるものの、どの年齢でも発症する可能性があるといえます。
男女別の発症率は、男性が女性よりも1.4倍高いという報告もありますが、現在ははっきりした男女差はないと考えられています。
統合失調症の発症ピークは、男女ともに進学や就職、結婚、出産などの人生の節目の時期と重なります。
環境の大きな変化は、それだけで大きなストレスになります。
ストレスと統合失調症との関係については、後述で詳しく解説しますが、環境の変化という大きなストレスが発症の一因になっている可能性もあります。
しかし、学校を卒業して社会に出ようとする時期や、新しい家庭を築こうとする時期に統合失調症を発症すると、その後のライフプランやライフスタイルを見直す必要が出てきます。
そのため、家庭や社会との繋がりを維持しながら、自立して生きていくために、まずは病気を正しく理解することが重要になってきます。
次回は、統合失調症の発症のメカニズムと、発症要因について、もう少し詳しくみていきます。
次回、「統合失調症の発症要因とは」へ続く