「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第10回は、「休息期・回復期に多くみられる『陰性症状』」の続き、「生活活動に関わる第3の症状『認知機能障害』」についてみていきます。
目次
生活活動に関わる第3の症状『認知機能障害』
日常生活や社会生活に影響を及ぼす
「認知機能障害」は、かつて陰性症状の1つとして捉えられていた時期もありますが、研究が進んだ現在は、統合失調症の中核をなす「第3の症状」として重要視されています。
認知機能は、日常生活や社会生活を営む上で欠かすことのできない機能で、
- 記憶力
- 思考力
- 判断力
- 注意力
- 計画機能
- 実行機能
- 統合機能
などが含まれます。
統合失調症では、これらの機能が低下することで、「生きづらさ」を感じたり、社会的機能にも障害をもたらします。
例えば、「記憶力」が低下すると、新しいことを覚えるのが難しくなったりします。
統合失調症では、特に「ワーキングメモリー(作業記憶)」と呼ばれる機能の低下が知られており、何をしようとしていたのかを忘れてしまったり、人の話や読んでいる本の内容などが頭に入らなくなったりします。
「注意力」には、「選択的注意」と「持続的注意」があり、選択的注意が低下すると、些細な物音が気になり、ざわざわしている中で相手の話を聞き取るのが難しくなります。
持続的注意の低下では、注意散漫になりやすく、いわゆる不注意になります。
「実行能力」が障害されると、計画を立てて、効率よく物事を処理することができなくなり、複数の仕事をまかせると、何かしら手をつけたらよいのかわからないといった状態に陥ります。
また、仕事だけでなく、料理などの家事を手際よくこなすのも困難になります。
これらの認知機能障害は、前駆期から始まっていると考えられ、陽性症状や陰性陰性症状が改善したあとも持続することが多いとされています。
統合失調症にみられる「認知機能障害」とは
記憶力の低下
- 作業などをしている時に、何をしていたのか忘れてしまう
- 仕事や勉強で新しいことを覚えるのが難しくなる
- 人の話、本やテレビの内容などが頭に入ってこない
など
注意力の低下
- 些細な物音に気を取られて、集中できない
- ザワザワしている中で、相手の話を聞き取るのが難しくなる
- 集中力が続かず、注意散漫になる
など
比較照合の低下
- これまでの記憶と照合して適切な判断ができなくなる
例)Aさんと同じメガネをかけているだけというだけで、BさんをAさんだと思い込む
実行機能の低下
- 複数の仕事をまかせると、何から手をつければよいのかわからなくなる
- 料理を手順よく作れない
など
次回、「早期発見・治療が回復を早める」へ続く