「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第15回は、「診断には世界基準も参考にする」の続き、「どのような治療が行われるのか ① 主治医とのコミュニケーション/薬物治療・リハビリ」についてみていきます。
目次
どのような治療が行われるのか ①
治療は医師とのコミュニケーションが大切
問診、検査などが一通り終わると、その時点で、
- 診断と病状
- 今後の治療方針
- 休息の必要性
- 薬の作用・副作用
- 今後の見通し
- 生活上の注意点
などについて、医師から説明があります。
ただし、これらの説明を初診時に全て行うのは難しい場合もあるので、まずは現時点で必要なことを説明し、症状が落ちつくのを見ながら、順をおって説明を加えていく場合もあります。
こうしていよいよ治療がスタートしますが、医師や治療方針、薬などに対して不信感があると、治療をスムーズに進めることができません。
不明点や不安に思うことがあれば、理解と納得が得られるまで何度でも医師に確認することが大切です。
一方、医師側も患者さんや家族からの情報を必要としています。
例えば、
- 薬を服用して症状は改善されたが、副作用は出たか
- 症状の悪化や再燃
- 新たな症状の発現はあるか
など、さまざまな情報を受けて、医師は薬を調整していきます。
統合失調症は長い経過をたどる病気なので、医師との信頼関係は不可欠です。
治療をスムーズに進め、適切な治療をさらに継続していくためには、医師と良好なコミュニケーションを図りながら、よりよい関係を作り上げていくことが大切なのです。
なかなか治療の効果が現れない時など、主治医への不信感が募り、医師を替えたいと思うこともあるかもしれませんが、医師を替えたからといって、症状がよくなるとは限らず、むしろ治療の中断から症状の進行を招くこともあります。
医師の変更にはデメリットもあるということも知っておいてください。
医師と良好なコミュニケーションを作り上げるコツ
- 病気そのものや治療方針、薬などについて理解する
- 薬の効果や副作用について正しく情報交換する
- 生活上の不安や心配、困ったことなどを伝える
- 医師との信頼関係を“育てていく”という気持ちで
不信感がぬぐい切れない場合は医師の変更を考える
- 主治医の説明が不十分
- 薬の種類・量がやたらと多い
- 患者さん本人の主治医への不信感が強く受診を拒否する
医師を変更するデメリット
- 治療が中断し、その間に病応が悪くなってしまうことがある
- 新たな主治医と一から信頼関係を築き直さなければならない
基本は通院での外来治療
かつての統合失調症の治療は、入院治療が中心でしたが、そのため、統合失調症と診断されたら、
「社会から隔離される」
などと誤解されている方も多いのではないでしょうか。
さらに、
とお思いの方もいるかもしれません。
しかし、現在の統合失調症の治療は、基本的に通院でも外来治療が中心となっています、
理由としては、
- 薬や医療の進歩により、重症化する患者さんが減ってきたこと
- 社会から隔離するこという否定的な考えが否定され、患者さんの社会復帰が重要視されるようになった
などが挙げられます。
入院治療には、24時間体制で患者さんの状態を把握し、集中して治療することができるなどメリットもありますが、一方、入院という環境の変化が一時的に症状を悪化させてしまうケースも少なくありません。
また、入院することで日常生活が中断してしまうと、生活能力や社会性が低下し、社会復帰がより困難になるという問題もあります。
患者さんの病状によっては、入院治療が必要になることもありますが、できるだけ患者さんの通常の生活を中断しないよう、自宅の生活を続けながら通院して治療を行うのが原則です。
外来治療を続けるためには、患者さん自身が通院の必要性を理解して、受け入れることが重要になります。
病識を持てない患者さんに、
と言っても、恐らく通用しないでしょう。
しかし、病識のない患者さんにも、眠れない、気が休まらない、外にでるのが怖い、などのつらい症状が必ずあるものです。
そのつらい症状を楽にするための通院・治療なのだと理解してもらいましょう。
薬物療法とリハビリを組み合わせて治療する
統合失調症の治療は、「薬物療法」と「リハビリテーション(以下リハビリ)」を組み合わせて行われます。
2つの療法は、どちらが欠けても治療はうまくいかない…
ということをまず理解してきましょう。
「薬物療法」の中心となるのは、「抗精神病薬」と呼ばれる薬で、脳内物質のバランスを調整することで、幻覚や妄想、興奮状態といった急性期の激しい症状を鎮静化させる作用があります。
また、抗精神薬には再発を防止する作用もあり、安定した日常生活を維持するためには、急性期の症状が治まったあとも継続して服用することが大切になります。
統合失調症の患者さんは、病気による認知機能障害のため、日常生活が困難になっていたり、社会にうまく適応できなくなったりして、「生きづらさ」を抱えています。
薬物療法だけでは認知機能障害を改善することはできず、生きづらさを解消することもできませんが、そこで有効なのが「リハビリ」です。
統合失調症のリハビリには、
- 社会性や生活機能を取り戻す「SST(社会生活技能訓練)」
- 歪められた思考パターンを修正する「認知行動療法」
など、さまざまな訓練法があります。
足を怪我して歩けなくなった人が、リハビリで再び歩けるようになることを目指すように、統合失調症のリハビリでは、日常生活や社会生活で生じている困難を克服するとともに、意欲や希望を取り戻して社会復帰を目指します。
統合失調症の治療というと、幻覚や妄想など激しい症状ばかりに目がいきがちですが、症状を消し去ることだけが治療ではないのです。
病気によって生じている、さまざまな障害を乗り越えて、QOL(生活の質)を向上させ、一人の人間としての全体的な回復を目指すことが、治療の本質といえます、
次回、「どのような治療が行われるのか ② さまざまな専門スタッフとの連携・協力」へ続く